研究課題/領域番号 |
18K01302
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
西村 淳 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20746523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会保障法 / 地域福祉 / コミュニティケア |
研究実績の概要 |
2年目である2019年度は、まず、横須賀市内において、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生児童委員協議会、医師会、市役所などの地域福祉の実務関係者によるワークショップを継続し、第4回を6月18日に開催した。事前に地域における福祉資源マップを作成し、地域における福祉ニーズやサービスネットワークについての議論のたたき台とした。地域支援の住民活動のあり方について活発な意見交換を行うとともに、今後の地域における参加型調査についての協議を行うことができた。また、これとは別に、横須賀市内の地区の地域包括支援センター、地区社会福祉協議会、民生児童委員協議会、町内会、NPO、居宅介護支援事業所などを訪問し、具体的な取組についてのヒアリングを行い、地区における営利・非営利の福祉サービスの具体的な連携のあり方とネットワークの全体像を明らかにした。 もう1つの柱であるイギリスでの調査に関しては、地域福祉における参加支援論と権利論を中心に、日英比較についての文献調査を行ったうえ、2019年9月に、横須賀市と姉妹都市関係にあるメドウェイ市を訪問し、市のソーシャルワーカー、ジョブセンタープラス、就労支援事業所などの地域福祉の実務関係者の協力を得て、地域福祉におけるサービスと権利関係に関する現場の実態調査を行った。具体的には、1993年のコミュニティケア法から2016年の新ケア法への流れも踏まえ、ケア法の運用状況を明らかにするとともに、イギリスの社会福祉の特色である就労支援を重視した福祉サービスの現状を明らかにし、イギリスにおける相談援助・地域資源開発などの仕組みを整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目である2019年度は、日本においては、地域における福祉サービスのネットワークの全体像を明らかにするため、横須賀市における地域ワークショップを開催するとともに、地域福祉関係者の調査を行うことにしていたところ、当初の予想よりも参加者が多く約50名の参加者を得て、今後の地域調査についての具体的な協議を行うことができ、また関係者の個別調査も進めることができた。一方で、3月に開催予定の地域ワークショップは新型コロナウイルスの影響で開催することができなかった。 また、イギリスを訪問し、地域における福祉サービスのネットワークの全体像を明らかにすることにしていたところ、9月にメドウェイ市を訪問し、地域福祉の実務関係者の協力を得て、地域福祉における権利関係に関する現場の実態調査を行うことができた。その後も連絡を取って調査を継続している。 これらの調査を踏まえた分析を進め、2年目において一定の成果を得ることができた。その成果は、論文「ソーシャルワーカーと法の関係に関する日英比較―ソーシャルワーカーの実践・教育・役割に着目して―」『社会福祉研究』第134号、「福祉サービス提供過程の法的分析―ソーシャルワーク法試論」『年報公共政策学』第14号の一部に反映できた。また、国際シンポジウム(2020年3月・ルーヴェンカトリック大学)における報告 "Structure of Personal Social Services in the Regional Space---in the context of Japanese community care policy" にも反映することができた。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる2020年度には、横須賀市内での地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生児童委員協議会、医師会、市役所などの地域福祉の実務関係者とのワークショップを引き続き開催する。住民代表の参加も得たいと考えている。これらの関係者の協力を得た調査を踏まえ、地域福祉の法的権利にかかる運用実態と課題について明らかにすることとしている。具体的には、横須賀市上町第二地区における地域福祉資源の現状と課題の整理と、今後の地域活動への参画意欲に関する住民意識調査を進めたいと考えている。 また、イギリスの関係者と連絡を取って、イギリスの情報提供・権利擁護・相談援助などの個人利用支援、地域計画・人材育成・資源開発・ネットワークづくりなどの地域支援、住民集会・行政手続など政策過程参加支援の仕組みについてなど地域福祉の制度に関する調査を進めるとともに、本年度は、とくに日英比較の観点と、地域福祉における権利性の分析の観点を重視して分析のまとめを行う。 さらに、横須賀市またはメドウェイ市において総括的な国際シンポジウムを行い、研究結果を総括するとともに、日英比較を踏まえた地域福祉の法的権利構造の解明と構築についての研究成果について積極的に学会報告等を行っていくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目の今年度における研究計画はほぼ当初予定通りに進み、経費の執行もほぼ予算通りであったが、初年度においてイギリス・メドウェイ市及びロンドン大学を訪問し、研究計画について予備的な打合せを行う予定にしていたものの調整ができず、実現できなかった分が持ち越しになっており、その分を次年度使用に回さざるを得なかった。 3年目にあたる2020年度において、改めてイギリス訪問を行い、調査を行うとともに、その結果の分析を行っていく予定である。
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