最終年度である2022年度においては、まず、地域における法的権利の保障プロセスに注目して、横須賀市内における地域実践の調査の仕上げを行った。具体的には、横須賀市地域福祉課、グリーンハイツゆいの広場、北下浦地域包括支援センター、北下浦ボランティアセンターなど地域の関係機関・関係者を訪問し、具体的な取り組みについてのヒアリングを行い、地域のネットワークや実践プロセスの調査により、一定の成果を得ることができた。一方、比較対象としてのイギリスにおける地域実践については、イギリス側研究者・関係者とのオンラインによる連携と情報収集により、ケア法のプロセスを一定程度明らかにすることができた。これらの調査を踏まえ、横須賀市内で行ったフォーラム「地域共生社会と社会福祉の実践~社会福祉のイノベーションに向けて」(2022年6月)及び「社会的処方と地域包括ケアシステム~地域の助け合い活動をより良いものにするには~」(2023年1月)において、調査結果の報告を行った。 研究期間全体を通じて、日本及びイギリスでの実践者・研究者との情報交換も含めた地域調査・文献調査を行い、主に以下の研究成果を得ることができた。①社会福祉サービスの個人契約利用・政策決定過程への参画・地域資源への参加について、給付だけでなく一連の権利実現過程の下に置かれた体系としてとらえることができた。②地域福祉について、供給体制の整備にかかる制度論を超えて、利用者や住民の権利論としてとらえることについての可能性と限界を明らかにした。③日本の横須賀市とイギリスのメドウェイ市を中心に調査し、具体的な地域福祉の制度と権利実現過程を明らかにすることができた。また、本研究の成果を、最終年度に、西村淳『参加・貢献支援の社会保障法』(2023年2月、信山社刊)として公刊した。さらに研究の一部を2023年の日本社会保障法学会の大会で報告予定である。
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