研究課題/領域番号 |
18K01303
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
伊奈川 秀和 東洋大学, 社会学部, 教授 (90304708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタル化 / 見える化 / 遠隔医療 / ビックデータ / インセンティブ |
研究実績の概要 |
2021年度においては、引き続き、医療・福祉サービスの需給調整、行政計画等の法的意義及び規範理論の構築に関する研究の深化を図った。昨年度に続きコロナ禍の研究となり、そのことも意識した持続可能な制度構築に向けた研究に傾注するよう努めた。例えば、コロナ対応において遠隔医療が果たす役割、社会保障のビックデータの活用等の視点である。 昨年度までの研究において、社会保障の伝統的な手法であるで事業者等の許認可制度、基準等の遵守義務等の規制的手法、補助金、融資等の奨励的手法の限界を乗り越える総量規制や公募指定、フランスの企画公募、第三者評価等のプロセスアプローチ等については論じてきた。その上で2021年度においては、ICTとも関係して進捗が著しい医療福祉分野のデータ集積のサービスの需給調整の側面での利活用と規制に着目した研究を行った。その際、フランスの社会保障財政法、ヘルス・データ・ハブ等の最新の動向を比較法の観点から参考にした。 具体的な研究の第一は、生活習慣病対策、介護予防等の分野で顕著に見られる人々の行動変容を促すインセンティブ制度等の政策を社会保障法として如何に位置づけるかの検討である。第二は、ビックデータの研究への利活用に偏りがちな社会保障の情報をその出所である国民(被保険者等)を如何に還元するかの検討である。第三は、これらの点を踏まえた社会保障の見える化も含めた持続可能な制度の構築のための規範論の検討である。 これらの研究の成果は、伊奈川秀和(2022)「デジタル化時代の社会保障の見える化に関する考察」福祉社会開発研究第14号、伊奈川秀和(2022)「フランス医療保障制度に関する動向」Monthly IHEP第314号等に反映させ発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、引き続きのコロナ禍での研究であったため、比較対象国であるフランスを訪問しての調査等はかなわなかった。しかし、2021年度の研究で着目したICT化は社会保障分野にも確実に及んでおり、フランスにおけるビックデータの利活用やそれに対する規制等の状況、社会保障財政法等を通じた社会保障の見える化は、インターネット、ウェビナー等を通じて一定程度最新の動向を把握することができた。言い換えれば、社会保障財政法の医療費の管理目標(ONDAM)を典型として、ビックデータが社会保障の支出を規制するという形で、ある意味での科学的根拠に基づく行政(EBPM)が確実に進んでいることを実感させることにもなった。 その一方、コロナ禍において、日仏の様々な関係者との接触は、2021年度も大きく制約を受けることになった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、コロナの状況にもよるが、これまでの文献中心の研究では確認できなかった点をフランスでの現地調査、実務家、研究者等との接触の機会を設けることにより明らかにし、これまでの研究成果をまとめることにしたい。また、コロナ禍での移動の制限は、国内においても同じであり、2022年度においては、国内においても、福祉医療サービスにおけるインセンティブ制度、社会保障の持続可能性を高めるデータの活用等の関係で先進的な事例等を調査する機会を設けたいと考えている。 いずれにしても、本研究が目指す社会保障の新たなパラダイムの構築の必要性は年を追うごとに高まってきている。特にデジタル化、それとも関係するインセンティブ制度等の新たな手法は、そのこととも深く関係する。その点で重要となるのが施策としてのフィージビリティであり、2022年度は、実態把握も含め理論と実践の両面から研究を深めることにしたいと考えている。 今後のコロナの状況によって、特に国内外の移動や人的交流の制約が大きい場合には、文献研究、インターネットの活用等の代替手段により研究を進めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、2021年度に実施予定であったフランス及び日本国内での現地調査、国内の実務化等との研究に必要な交流が実施できなかったため、2022年度において、コロナの状況も見つつ、これらを実施する予定であるためである。
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