研究課題/領域番号 |
18K01305
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
緒方 桂子 南山大学, 法学部, 教授 (70335834)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 非正規労働 / 雇止め法理 / 労働契約法19条 / 架橋的パートタイム労働 / 非常勤講師 / 有期労働契約 |
研究実績の概要 |
2019年度の成果は大きく次の3つである。 第1に、有期労働契約の雇止め法理の制定法化の意義とそれに基づく法解釈のあり方を追究したことである。労契法19条は、これまで判例法理として形成されてきたものを立法化した条文であるが、その意義を踏まえながら、新たに導入された有期労働契約の無期転換権に係る同法18条との関係で、どのような法解釈をすべきかを論じ、「有期労働契約の更新限度条項に関する一考察 労契法19条2号に関する相補的審査及び「無期転換権発生回避行為否認の法理」の展開可能性」(単著、2019年9月、季刊労働法266号、労働開発研究会、pp.116-127)としてまとめ、公表した。 第2に、ドイツにおいて2019年1月から導入されている「架橋的パートタイム労働制度」について、その意義と法的効果に関して考察を進めた。その成果として、同制度に関して連邦労働裁判所の判事として立法過程に関与したフランツ・ヨーゼフ・デュヴェル博士の論考を翻訳し、フランツ・ヨーゼフ・デュヴェル/緒方桂子訳「架橋的パートタイム制の導入とパートタイム労働の権利の展開」橋本陽子編著『EU・ドイツの労働者概念と労働時間法』(信山社、2020年3月)として公刊した。 第3に、韓国の非正規労働のひとつである、大学の非常勤講師をめぐる法的・社会的状況について概観した。その成果は、「韓国における大学非常勤講師の処遇改善の光と影」(単著、2020年4月、労働法律旬報1957号、旬報社、pp.4-5.)として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年8月末から2021年2月末までの予定で、ドイツ(ベルリン自由大学)及び韓国(梨花女子大学)での在外研究を開始した。本研究課題を申請した際には在外研究は予定しておらず、当初予定していた現地でのインタビュー調査や資料収集等はともかく、日本国内での公刊物などが容易に入手できず、研究の進行に支障が生じている状況にある。また、日本国内での研究発表やその成果の公表などにおいて遅れが生じている。さらに、2019年2月頃から、新型コロナウイルス禍の影響で、在外研究先での研究者らとの意見交換や資料収集、インタビュー調査などが容易にできない状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年8月末から開始した在外研究は2021年2月末まで継続する予定である。そのため、在外研究中であることから生じる不都合(日本国内の飼料等へのアクセス、研究成果公表方法が限定されてしまうこと等)は回避できない。そこで、本研究課題の研究期間を1年間延長し、在外研究期間を終了して日本に帰国した後に、研究課題を完遂したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年8月末から在外研究を開始した。そのため入手を予定していた海外文献や研究者らとの意見交換に係る必要経費(資料購入費や旅費等)の負担が軽減した。 他方、日本国内で公刊された研究資料等の入手が困難となり、また日本国内における研究成果の発表や公表の手段が制限されるため、研究に遅れが生じている。 本研究課題については、当初、本年(2020年度)を最終年度として予定していたが、1年間研究期間を延長し、2021年度を本研究の最終年度とする。そして、2019年度に生じた次年度使用額と翌年度分として請求する助成金額を合わせて、2020年度及び2021年度の研究費とし、本研究課題についての研究を完成させる。
|