研究課題/領域番号 |
18K01306
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
春田 吉備彦 沖縄大学, 法経学部, 教授 (90435206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 駐留軍等労働者 / 排他的基地管理権 / 間接雇用方式 / 日米地位協定とMLCの関係 |
研究実績の概要 |
研究目的のひとつに、積極的に、本研究を全国発信していくというものがある。この目的に即して、『沖縄県産の労働法』(琉球新報社、2018年)の一章では、「駐留軍等労働者の働き方、知っているやっさー?」(120頁から138頁)を執筆した。同様に、「米軍基地労働者の雇用」(琉球新報・論壇2019年1月19日)、「翻弄される基地労働者」(沖縄タイムス・論壇2019年3月16日)が沖縄の地元新聞において掲載することで、沖縄県民にも積極的に発信した。 研究目的のモチーフは、①排他的基地管理権、②間接雇用方式、③日米地位協定とMLCの関係をそれぞれ解明することである。『労働法律旬報1917号』(旬報社)において、「在日米軍基地従業員の労働問題」という特集を企画し、その中で「駐留軍等労働者にかかわる労働法上の課題」(6頁から14頁)を執筆した。また、新田秀樹他編『現代雇用社会における自由と平等』(信山社、2019年3月)において、「駐留軍等労働者における『間接雇用方式』の歴史的展開と労働法上の課題」(401頁から422頁)を執筆した。両論文において、①②③の学術的解明を行った。とりわけ、後者の論文においては、これまで、②に関して、労働法上も未解明であった、国・米軍・駐留軍等労働者にかかわる「間接雇用方式」が第二次世界大戦後どのように形成されてきたかを解明しており、学術上も有意であると思慮する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の資金によって、米軍基地立ち入り調査(三沢基地・横須賀基地)を行った。なお、日本全国に存在する全ての米軍基地にかかわる調査は途上である。また、同一場所を複数回、訪問することで、基地労働者やその組合との信頼関係が醸成されており、従来、着目されなかったような新たな労働問題にかかわる情報を獲得するという貴重な経験をした。横須賀基地内では、「空母ロナルド・レーガン」に実際に乗船することができ、この経験は、学術雑誌に掲載されることになっている。 当初、予測していたよりは実態調査の手法や丁寧さを、今後、見直していく必要があると感じており、実態調査は、若干、遅れ気味である。その一方で、論文等の業績発出については、当初の予測よりは、多様なものが発出できている。
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今後の研究の推進方策 |
実態調査をより、効率的・効果的に行う。これまで訪問した米軍基地やその地区の基地労働者の労働組合を複数回訪問することで、さらに労働問題の発掘を深堀する。これまで訪問していない米軍基地についても、適時、訪問していく。 なお、申請者を中心として、『労働と経済』(労働開発研究会)という雑誌に、「基地労働者から見た、日本の『戦後』と『災後』と『今後』」というテーマで、1年半にわたる期間をかけて、このテーマに関心のある執筆陣の協力のもと、各論稿を連続掲載することとなった。これらの雑誌連載を申請者が統括するとともに、申請者個人の研究においても、各執筆者の問題関心に触発され、新たな問題意識を掘りおこすことにつながると思われる。実態調査の実施と問題意識を共有する研究者との交流を通じて、さらに業績を発出していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
事務処理上の混乱を避けるため、2019年度3月期においては、当初予定の支出を手控えた。このため、若干のずれが生じている。
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