研究課題/領域番号 |
18K01306
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
春田 吉備彦 沖縄大学, 法経学部, 教授 (90435206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 駐留軍等労働者 / 基地労働者 / 排他的基地管理権 / 間接雇用方式 / 日米地位協定 / MLC |
研究実績の概要 |
研究目的のモチーフは、①排他的基地管理権、②間接雇用方式、③日米地位協定とMLCの関係をそれぞれ解明することである。2019年度の研究実績はつぎのものがある。 (1)研究目的のモチーフのうち、とりわけ①の問題に焦点を当て、2018年12月18日に在日米軍横須賀基地内に停泊中の「空母ロナルド・レーガン」において実施された「日米合同訓練」の見聞記を執筆した。これが、春田吉備彦「Invisible baseworker(見えざる基地労働者)―ロナルド・レーガン乗船記―」『沖縄大学法経学部紀要第31号』(29頁~36頁)である。 (2)日韓の国交が正常化していなかった、1956年に発生した、千代田丸事件をモチーフに「戦争災害(戦災)」「自然災害」 「労働災害(労災)」「NBC災害」 「CBRNE(シーバーン)災害」 「武力事態災害」 等の多様な災害概念を整理、労働者の労務給付拒絶権について試論を展開した。現在、基地労働者が直面している、「労務指揮権」の問題の基礎的考察としての位置づけをもつ、研究業績として、春田吉備彦「災害時の労働者の労務給付拒絶権にかかわる一試論―千代田丸事件最高裁判決(最三判小判昭和43.12.24民集22巻13号3050頁)の再読を通じて」大曽根寛/森田慎二郎/金川めぐみ/小西啓文編『福祉社会へのアプローチ 下巻』(成文堂)(353頁~366頁)がある。 両業績とも、主として、日米地位協定上の①排他的基地管理権に関連する考察である。日本国内にありながら、米軍基地内の労働問題や米軍関係の労働問題は、可視化が難しいという特徴がある。両業績は、この点に着目している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の資金によって、米軍基地立ち入り調査(横田基地・佐世保基地)を行った。なお、日本全国に存在する全ての米軍基地にかかわる立ち入り調査はその途上でる。また、同一場所を複数回、訪問することで、基地労働者やその組合との信頼関係が醸成されており、従来、着目されなかったような新たな労働問題にかかわる情報を獲得するという貴重な経験をした。 実態調査は、若干、遅れ気味である。その一方で、論文等の業績発出については、順調に発出できている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は科研費の最終年度でもあるため、これまでの研究・調査にかかわる総括論文を執筆する予定である。また、この内容は、雑誌『労働と経済』に掲載され、かつ、私が編者となった本が、労働開発研究会から出版される予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた調査や研究会出席のキャンセルがあったため、使用計画に変更が生じてしまった。この繰越額を使って、次年度の計画もとしては、文献研究に重点を置くことにしている。
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