本研究は、平成29年の刑法改正による性犯罪処罰規定について解釈論的な検討を加え、さらに、今後の課題について立法論的な検討を加えようとするものである。具体的には、①強制性交等罪の成立要件および量刑判断、②監護者わいせつ・性交等罪における要件解釈、③強盗・強制性交等および同致死罪の成立要件などの解釈論上の問題について理論的な検討を加え、一定の解釈論的帰結を得ること、さらに、上記の解釈論的研究と関連付けながら、④強制性交等罪における暴行・脅迫要件の要否、⑤地位・関係性を利用した性犯罪処罰規定の要否、⑥強制性交等罪と強制わいせつ罪の区別の基準などの立法論的な課題について検討を加えることを目的とする。 本研究は2020年度に終了する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で出張等が困難になったこと、また、新たな法改正の動きがあったことから、2021年度まで研究を継続したものである。国内外の出張はなお困難な状況であったが、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会に参加し、同部会における議論を踏まえつつ、現行法の解釈に関する理解を深めることができた。 具体的な研究成果については、法学雑誌等に公開する予定であるが、たとえば監護者性交等罪が、いわば一定の関係性に基づいて影響力を幅広く認める規定であることから、同一の規定方式を監護者以外の地位・関係性の利用類型に一般的に拡大することは困難であることなどの知見を得るに至った。
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