研究課題/領域番号 |
18K01311
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
王 雲海 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30240568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 死刑 / 死刑冤罪 / 中国の死刑制度 / 「掃黒除悪」 / 政治的キャンペーン / 刑事法の適用 / 冤罪の是正 / 政治的刑事司法 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の研究計画のように、中国における冤罪の原因を政治レベル、社会文化レベル、法律レベルにわたって究明し、その総合的原因を提示し、研究を完成し、日本語のほかに中国語と英語でのその成果を公表しようとして研究を進めてきた。その結果として、政治運動としての刑事法適用様式が中国での冤罪、特に死刑冤罪の最大な原因であることは、冤罪被害者、弁護士、一部の元の裁判官、検察官とのネットでのインタビューや報道されたいくつかの冤罪自体の検討から明らかになった。中国での冤罪は日本や欧米のそれとは質的に違っており、刑事法・刑事司法そのものの不備や誤った運用から起因するよりも、刑事法・刑事司法の政治性・政治運用から生み出された冤罪である。脱政治性・刑事司法の独立は冤罪、特に死刑冤罪を防止するための必要不可欠な一歩である。しかし、現実には逆の動きがますます強くなっている。「掃黒除悪」という政治的刑事法適用キャンペーンが依然として展開しており、しかもかつてないほど強調されている。司法・刑事司法の政治性がかってないほど求められている。そのような現実のなかでは、冤罪、特死刑冤罪の原因をなくすことが難しくて、特に「掃黒除悪」キャンペーンのなかで新たな冤罪が多く生み出されているのではないかと危惧される。 本来ならば、今年度で、現地に行って関係者との会見やインタビューを行って、原始的資料を探して、本研究の実施を通じて得た結論を日本語のほかに中国語と英語でも公表する予定であったが、コロナウイルスの感染流行やその他の環境変化により、それは実施できなくて、今後に委ねざるを得なくなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来ならば、現地に行って、冤罪の被害者、関係の弁護士、検察官、裁判官などと直接面会し、インタビューを行い、原始的な確実な資料で研究を進めて、研究結論を得ることが予定されていたが、コロナウイルス感染の流行により現地へ訪問し、実際に調査することも関係者への面会やインタビューすることもほぼできなかったので、研究結論の構成、そして、その公表は遅れざるを得ない状態が続いている。とはいえ、コロナウイルス感染状況が収束して、現地へ行くことができるようになれば、すぐ研究を完成し、研究成果を公表することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のように研究を進めていく。 第一に、コロナウイルスの感染により人員往来ができない事態に積極的に対応しようとして、オンライン・ネットを通じての資料収集に一層の力を入れて、現地に行かなくても確実な情報を得て、確実な研究を遂行できるように工夫していく。 第二に、中国で公表された冤罪に関する紙面の資料を最大限に収集して、確実な検討を加えて、万が一現地にどうしても行けない場合に備えて、これまでの研究で得た資料と公表された証明資料だけでも科学的で確実な研究結論を得られるように、また、コロナウイルス感染という事態に対応できるように、研究を進めていく。 第三に、日本語だけでなく、中国語でも英語でも研究成果・研究結論をなるべく早く公表できるように関係機関と交渉し、研究の確実さを担保したうえで早いうちに論文と図書の形で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、現地に行き、冤罪特に死刑冤罪の被害者、関係の弁護士、検察官、裁判官などを訪問し、インタビューし、原始的資料と情報で中国での冤罪、特に死刑冤罪の原因を解明することが最大の特徴であり、または、最大の強みでもあるが、コロナウイルス感染の流行により人員往来がほぼ不可能となり、予定されていた現地への調査などはすべて実施不可能となってしまった。そのために、次年度使用額が多く生じてしまった。補助事業期間延長を申請し、承認をして下さったので、延長期間中、研究を完全に遂行するように努める。 使用計画として、まず、最近明るみに出た6つの死刑冤罪事件の遺族とそれを暴露した弁護士たちを直接訪問し、拷問による自白の強要が多くの場合冤罪の直接な原因であるという本研究での見解を関係者の直接な証言をもって証明し、取り調べの適正化・国際基準化が冤罪防止の第一歩であることを提言する。次に、可能であれば、本研究の成果をまず中国(中国語)で発表すべく赴き、関係機関・関係研究者と話し合っていく。
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