研究課題/領域番号 |
18K01318
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡田 行雄 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (40284468)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 社会内処遇 / 施設内処遇 / 反暴力コース / 反暴力トレーニング / ドイツ少年司法 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究では,ドイツにおける少年ないし若年の粗暴犯に対する再犯予防に向けた処遇として取り組まれている反暴力トレーニングないし反暴力コースに関する文献および資料の収集をまず行った。次いで,四国少年院を参観し,粗暴犯処遇の現状についての聴き取り調査を行い,最後にドイツのベルリン,ハンブルク州,シュレスビッヒホルシュタイン州における刑事施設及び社会内処遇を行うNGOを訪問し,反暴力トレーニングないし反暴力コースのプログラム内容やその予算措置などについて聴き取り調査を行った。 その結果,日本の少年院に比べて,ドイツの施設内及び社会内における処遇の方が,より少年ないし若年者の粗暴行為予防に特化したプログラムを実施していること。そして,ドイツにおける社会内処遇については自治体による財政的支援がその基盤となっているが,同時にそれは州や都市によって異なること。こうした反暴力コースなどの社会内処遇を担うNGOは独自に活動をしており,相互の交流や情報交換は必ずしもなされていないこと。他方,シュレスビッヒホルシュタイン州の刑事施設においては社会治療の一環として,暴力的傾向の緩和ないし解消に向けた様々な処遇プログラムが実施されているが,その効果は十分に検証されていないことなどが明らかになった。 また,ドイツの刑事施設内における処遇プログラムの実施の法的根拠などについて,注釈書や各種論文から分析を加え,日本のような強制色が強いものではないが,全くの任意というわけではないものであることなどについて比較法学会において報告を行い,その成果を比較法研究にて公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の公表が順調に進んだわけではないが,本研究の取り掛かりとして,日独における粗暴犯少年の再非行防止に向けた処遇プログラムについてその原理に到達する手がかりを得ただけでなく,その現状と財政的基盤等についても一定の聴き取り調査を行い,今後の研究の進展に向けた足掛かりを得ることができたので。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は,粗暴犯少年に向けた特色ある社会内処遇を実施している日本の保護観察所を訪問し,そうした社会内処遇プログラムの内容とその成果等についての聴き取り調査をまずは実施して,粗暴犯少年に向けた社会内処遇の原理に迫るてがかりを得たい。また,引き続き,粗暴犯少年に向けた特徴ある施設内処遇を実施している少年院を参観して,その内容等について聴き取り調査を実施し,施設内処遇の原理についても検討を加える。 ドイツにおいては,反暴力コースないし反暴力トレーニングの原理についてさらに資料を収集するとともに,先駆的な研究を行ったドイツの研究者を訪問して,その原理をどのようにして実践に活用したのかなどについて聴き取り調査を行い,原理を処遇方法に具体化する手法とその妥当性について分析を加える。 2018年度の研究を通して,反暴力コースないし反暴力トレーニングを実施しているNGOが置かれている状況が州や都市によって異なることが明らかになったので,これも州によって処遇の根拠となる法律等も異なる刑事施設と同様に,前年度訪問した州で漏れのあった刑事施設や,未踏の州や都市において,少年ないし若年者の粗暴犯に向けた処遇を実施している刑事施設及びNGO等を訪問する。その際に,処遇の実際,処遇の財政基盤,そして処遇の効果検証等について聴き取りを行うことを通して,ドイツにおける少年および若年者の粗暴犯の再犯防止に向けた処遇プログラムの現状把握に努める。
|