まず、国内では、粗暴犯少年事件を担当した弁護士と実際に粗暴行為を行った少年にインタビューを実施し、併せて、粗暴犯少年に対して社会の中での居場所を提供しているシェルターや自立準備ホームについての聞き取り調査も実施した。その結果、粗暴犯少年の同種再非行防止にとって、少年院などの矯正施設を出た後に落ち着ける居場所の確保が重要であることが明らかになった。社会内処遇におけるプログラムの効果も、少年の居場所によって左右されることになる。 また、日本での学会参加などを通して、粗暴犯少年の多くが、粗暴行為以前に様々な被害を受けてきたことも明らかになった。しかも、そうした少年は自らの加害行為よりも、自らが受けた被害に対して何ら埋め合わせがないことに強いこだわりがあり、同種再非行防止に向けては、粗暴犯少年が受けてきた被害への埋め合わせも実施される必要性が確認された。 次いで、ドイツ調査では、ドイツ語文献の収集に加えて、反暴力トレーニングを社会内で実施している機関や、反暴力トレーニング理論をリードしてきた研究者やドイツにおいても粗暴犯少年に虐待などの被害体験が多くあることを明らかにした研究者を訪ね、それぞれ聞き取り調査を実施した。その結果、反暴力トレーニング理論は、粗暴犯少年に課題に向き合わせ、それを乗り越える成功体験を積み重ねさせることに重きが置かれており、その成否には、トレーニング参加者や少年を取り巻く人々、さらには少年の居場所が大きく関わっていることが明らかになった。 これらの成果のうち、粗暴犯少年の同種再非行防止に向けては、当該少年に積み重ねられてきた被害への埋め合わせが必要不可欠であること、また、当該少年の親などにその再犯防止に向けた協力を求めてきた刑事法システムに大きな課題があることについては、それぞれ書籍、論文にまとめて、公表できた。
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