研究課題/領域番号 |
18K01322
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安達 光治 立命館大学, 法学部, 教授 (40348868)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 重罪合意罪 / 1943年刑法改正 / ドイツ刑法草案 / 謀議罪 / 合意罪 / 意思刑法 |
研究実績の概要 |
令和2年度においては、現行ドイツ刑法において重罪合意罪(Verabredung zu einem Verbrechen)が制定された経緯に関する研究の一部として、1943年に本罪が刑法総則に新設された背景について考察した。謀議行為を一般的に処罰する規定は、19世紀前半のドイツのいくつかの領邦刑法典には存在したが、1871年のドイツ帝国刑法典では導入されなかった(個別の犯罪として、内乱罪には規定されていた)。その後、1876年の刑法改正では、重罪の教唆の未遂及びそれにかかわる行為については処罰されることとなったが(その経緯につき、安達「ドイツ刑法における重罪等の合意罪(Verabredung)に関する覚書」立命館法学375=376号(2018)1頁以下)、その際、対等な謀議関与者による犯罪遂行意思の合致であるKomplott(謀議罪)ないしはVerabredung(合意罪)を処罰する規定は設けられなかった。これに対し、第1次世界大戦後の1919年からナチス政権時代の1939までに起草された刑法草案の総則には、一貫して謀議罪ないしは合意罪の規定がみられる。本年度の研究では、1919年、1925年、1927年、1933年、1935年、1936年、1937年、1939年の各刑法草案の関連規定を調査し、謀議罪ないしは合意罪と未遂、共犯との関連における位置づけなどを確認した。これらの草案に関する国会(Reichstag)での議論の詳細や学説等における評価は今後の検討課題であるが、上述の1943年の刑法改正による重罪合意罪導入の背景的思想として、ナチスの意思刑法の考え方があることを見出すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究1年目である平成30年度には、2年目のドイツにおける国外研究に向けた準備作業を実施し、その上で、令和元年度には、前半(春学期)にフランクフルト大学で国外研究を、後半(秋学期)には本務校である立命館大学で学内研究を実施し、関連資料の収集と分析を進めてきた。その成果をもとに、3年目である令和2年度は、研究実績に示した課題を遂行することができた。これに対し、COVID19の影響により、当該年度に予定していたドイツにおける追加の調査等は、断念せざるを得なかった。前記した令和元年春学期の国外研究において、必要な研究資料の収集は概ねできていることから、この度承認された令和3年度への研究期間の延長により、当初予定していた研究課題は遂行し得る見通しであるものの、全体の計画からみた課題の進捗状況としては、やや遅れが出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、現行ドイツ刑法における重罪合意罪(30条)と犯罪団体結成罪・テロ団体結成罪(129条、129条a。以下では、結成罪と呼ぶ。)の歴史的経緯と現状について検討するものである。令和3年度は、本研究の最終年度にあたるが、そこでは、重罪合意罪が新設された背景に関する更なる分析と第2次世界大戦後の展開に関する検討、及び結成罪の現状の評価を行う。また、重罪合意罪については、1871年刑法制定以前のKomplott(謀議罪)の検討も視野に入れる。必要な研究資料の入手については、令和3年度の直接経費を充てることとする(当初計画していたドイツにおける追加調査については、現状では困難との見通しであることから、日本国内からの文献の取り寄せ等で対応する)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID19のために、令和元年度後半に予定していたドイツでの追加調査を延期せざるを得ず、また、令和2年度にも実施することができなかったため、そのための旅費等に係る支出及び関連文献等の購入に係る支出として予定していた金額を、令和3年度に持ち越すことになったことによる。令和3年度においても、ドイツに渡航しての文献調査等は困難と見込まれるため、当該金額については、日本国内での(からの)文献資料の収集、資料の閲読・分析等に必要な機材及びプリンタートナー等の消耗品の購入に充てる。
|