研究課題/領域番号 |
18K01322
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安達 光治 立命館大学, 法学部, 教授 (40348868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 重罪等合意罪 / 合意罪 / ドイツ刑法 / テロ等準備罪 / 共謀罪 |
研究実績の概要 |
本研究は、2017年にいわゆる「テロ等準備罪」が新設されたことを契機に、ドイツ刑法における共謀罪に相当する犯罪である「重罪等合意罪」(30条2項第3選択肢)および「犯罪団体結成罪・テロ団体結成罪」(129条・129条a)に関する歴史的経緯および解釈・適用の現状について検討するものである。このうち、過年度の研究では、テロ等準備罪の要件である「組織的犯罪集団」に関連して、犯罪団体結成罪の要件である「共同の目的」につき検討し、さらに、重罪等合意罪の制定経緯につき1910~1930年代のドイツ刑法改正草案を中心に調査した。 2021年度は、上記の研究成果を受け、とりわけ現行ドイツ刑法の前身である1871年帝国刑法典において、犯罪の謀議ないしは合意に関する罪が、一般規定として設けられなかった経緯について検討した。この点に関し、上記の重罪等合意罪の制定経緯に関する研究成果を公表した論文では、1871年帝国刑法典が内乱罪を除き謀議罪の処罰規定を設けなかった理由として、未遂との関連で、実行の着手以降の行為を原則として処罰対象とする以上、それ以前の予備段階に位置する謀議行為は不可罰であるとする当時の学説を紹介していた。しかしながら、帝国刑法典制定以前の領邦刑法典には、謀議罪を処罰するものが複数存在していたのであり、また、上記の研究で示したように、帝国刑法典制定後の改正草案では、謀議罪ないしは合意罪の処罰規定が設けられていたのであるから、実行の着手以前の予備段階の行為であるから当然に不処罰であるというだけでは、重大な犯罪の謀議ないしは合意を処罰しないとの立法判断をした理由として不十分なように思われる。そのような問題意識から、重罪等合意罪ないしは謀議罪に関する歴史的経緯について紹介、分析した論文等を参照し、その実質や位置付けなどについて検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要において示した研究を遂行しているところであるが、本研究においては、18~19世紀という時間軸と領邦刑法典の分析という場所的広がりの両者を踏まえる必要があるため、分析に時間がかかっている状況である。加えて、本研究課題のもう一つの柱である現行ドイツ刑法典における解釈・適用に関する調査に関しても、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
過年度の研究成果を土台に、研究実績の概要において示した現在の研究を着実に進めることに尽きる。具体的には、これまでの本課題の遂行において収集、整理したドイツ刑法関連の資料を改めて検討し、犯罪の謀議ないしは合意の処罰に関する刑事政策的な視点も交えながら、解釈論だけではない複数の視角から検討を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、これまでの本研究課題の遂行において収集した資料の分析に注力してきたため、新規の図書等の購入は行わず、ウェブ資料等の打ち出しに必要なプリンタートナーの購入等のみを行った。そのため、上記の余剰分が生じた。次年度は、分析の過程で参照の必要が生じるドイツ刑法関連文献の購入および論文作成に必要なパソコン等の機材の購入を中心に執行し、本研究課題の完結に資するものとする計画である。
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