本研究は、2017年に新設された「テロ等準備罪」の解釈、運用の在り方を検討する目的で、ドイツ刑法における共謀罪に相当する「重罪等合意罪(30条2項第3選択肢)」及び「犯罪団体結成罪(129条)」「テロ団体結成罪(129条a)」の制定過程及び解釈上の諸問題について調査検討するものである。共謀罪の研究はこれまで英米法を中心に進められてきたところ、我が国の刑法が従来モデルとしてきたドイツ刑法を検討対象とする点に、本研究の独自性がある。 本研究は当初、法解釈論だけでなく、歴史的経緯や実際の運用状況も検討対象としたことから、2019年度春学期に所属大学の学外研究制度を活用して、ドイツにおける文献収集と実務家のインタビューを実施した。インタビューの内容は先方との関係で公開できないが、これらの行為は、主たる犯罪を実行する前の予備行為を処罰するものであるから、例えば、組織的に行われる売春や薬物取引などの犯罪を捜査するための「入口」として活用されているとのことである。いずれにせよ、積極的な運用はされていないようである。文献資料に関しては、現行規定の前身である(旧)49条aに関する博士論文等の書籍を入手できた。その後、内地留学としていた2019年に秋学期に、追加の情報収集等を計画していたが、コロナ禍で果たせず、役職等との関係もあり、本研究期間内に渡独することはできなかった。 解釈論的研究においては、犯罪団体結成罪に関し、テロ等準備罪の要件である「組織的犯罪集団」解釈に資する成果があった。また、歴史的経緯の研究においては、重罪等合意罪の制定過程にについて検討を行い、その成果の一部を公表した。 最終年度においては、これまでの研究において十分に検討できていなかった、重罪等合意罪の解釈論上の問題について文献の調査等を実施した。その成果は、翌年度(2024年度)に所属機関の紀要にて公表する計画である。
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