研究課題/領域番号 |
18K01327
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤原 正則 北海道大学, 大学院法学研究科, 特任教授 (70190105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢社会 / 生前処分 / 継伝承継 / 特定相続 / 寄与分 / 配偶者(短期)居住権 / 遺留分 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、わが国の相続法制度を高齢社会との関係で、かつ、ドイツ法との対比で検討することである。その最初の出発点として、本年から徐々に施行されるわが国の改正相続法の幾つかの制度を検討し、それを同様の機能を有しているドイツ法の制度と比較することから研究を開始した。 その具体的内容は、特に、わが国の改正された制度で、ドイツとの対比で重要なものは、(ⅰ)配偶者(短期)居住権、(ⅱ)預貯金の仮払い制度、(ⅲ)遺留分制度、特に、現物返還から金銭債権化と猶予制度、(ⅳ)相続人以外の者の貢献の考慮(特別寄与者)である。同様の機能を果たす制度として、ドイツ法では、(ⅰ)一種の法定遺贈である30日間の猶予(Dreissigsten)、及び、先位・後位相続(Vor- und Nacherbschaft)、(ⅱ)予防法学である金融商品の共同預金(gemeinschaftliches Konto)、(ⅲ)遺留分(Pflichtteil)での猶予制度の検討であるが、(ⅳ)に関しては、ドイツ法では、同様の機能を果たす私法上の制度は存在しない。(ⅰ)~(ⅲ)に関しては、両者が)高齢社会への対応((ⅰ)、(ⅲ))、遺産分割の側面支援(ⅱ)という側面から共通性を有することの確認を行った。 他方で、同じく高齢社会への対応である(ⅳ)に関しては、両者の違いがわが国とドイツの社会事情、法制度の違いに由来することが多いことを確認した。すなわち、ドイツでは血族(法定)相続人の範囲が広く、特別縁故者の制度が存在しないこと、介護保険で現金給付を、しかも、法定相続人ではない隣人の介護などにも認めていることから、特別寄与者の制度を認める必要がなく、他方で、わが国では、法定相続人ではない子の配偶者の介護事例が多いことが背景となっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の予定どおり、(ⅰ)相続法制度の高齢社会への対応、(ⅱ)遺産分割制度の合理化という研究目標との関係では、わが国の法制度に関しては、ある程度以上の検討を進めることができたと考える。他方で、2010年に相続法を改正したドイツ法に関しては、そこで立法された幾つかの法制度に関して、文献による検討はある程度は進展した。ただし、ドイツ法の実体に関して、ドイツ人の研究者に調査協力を依頼したが、その作業は当初予定した程度には進行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
若干遅延している部分を進行させて、当初の方針どおり進行させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツでの2010年の相続法改正以後のドイツ法の実体の変化に関する共同研究を以来したドイツの研究者であるフックス教授(Prof. Dr. Maximilian Fuchs)をわが国に招待して講演を依頼し、共同研究会を行い、ドイツでの調査の準備をする予定だったが、2018年の年度末に予定していた訪日が教授の疾病で不可能となり、予定していた旅費額を残すこととなった。同教授の訪日が早期に可能なら今年度の訪日、研究会の費用に、それ以外の場合は、文献の収集、ないしは、ドイツでの実態調査の費用に充てたいと考える。
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