デジタルプラットフォームで革新的な金融サービスを提供する「ロボアドバイザー提供業者」に対して、いかなる法的規律を及ぼすべきか。2022年にケンブリッジ大学法学部のフェリックス・シュテフェック教授と提唱した「リーガルイノベーション」という新しい法学コンセプトを用いることで、東京大学公共政策大学院生達と一緒に考えた講義録「ロボアドバイザーへの法的アプローチ~リーガルイノベーションという視点から」を刊行した(判例秘書ジャーナル、2023年12月公開)。 また、民法97条~98条の2までの「意思表示の効力発生時期等」に関する法令・裁判例・学説を総覧する解説書(新注釈民法)がようやく刊行の運びとなった(2024年9月刊行予定)。出版社の事情で脱稿から5年近くもの時間が経過してしまい、校正作業は難航を極めたが、校了させることができた。このテーマは、意思の伝達に電話や電子メールなどの通信技術が用いられることにともない生ずるコミュニケーション・リスクを扱ってきた歴史がある。古くからの学説を総覧したことで、このテーマの学術的価値を再発見し、リーガルイノベーションというコンセプト着想の契機となった。その経緯、および、当時注目されていた技術であるスマートスピーカーの法的問題についてスケッチを試みた「意思表示の効力発生時期規定の現代化ーーリーガルイノベーション序説」岡本裕樹ほか編著『中田裕康先生古稀記念 民法学の継承と展開』(2021年・有斐閣)所収論文を参照されたい。
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