2022年11月6日日本保険学会大会(早稲田大学)報告「特定自動運行装置の製造者責任と保険」について、論文を執筆し、2023年6月発行の保険学雑誌661号で公表した。本公表論文を執筆するために、2023年3月下旬から4月上旬にかけてベルリン自由大学法学部に研究滞在し、自動運転レベル4の無人自動運転の製造者責任に関するドイツの学術論文を研究した。 本研究においては、自動運行装置の自動運転制御システムのAIを制作した者及びそのAIを車両に搭載した自動車メーカーが運行に関与する程度が格段に高くなること、AIに使用されるソフトウェアのプログラムのアップデート及び機械学習等を通して、自動運行装置が車両引渡し前と異なる状態になること、車両引渡し後も自動車メーカー等による自動運行装置に対する実質的な支配が及ぶこと等を考慮した保険の制度設計が必要であることを分析した。 また本研究においては、EU製造物責任指令の改正動向を踏まえたドイツの学説との比較法的研究を推進し、特定自動運行装置及びその装置を用いた車両製造者の民事責任は、危険責任の観点から厳格化される方向にあることを明らかにした。 本研究におけるドイツ法との比較法研究の成果として、日本の特定自動運行の特質を生かした形で、特定自動運行実施者、自動運行装置製造者、車両外部からのデータ提供者、道路通信インフラ事業者、保険会社等が、共同事業のメリットを生かした協力関係に基づく被害者救済のための特別な保険の仕組みを構築することの重要性を明らかにすることができた。
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