研究課題/領域番号 |
18K01334
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 民法 / 相続 / 財産承継 / 夫婦財産制 / 信託 / フランス法 |
研究実績の概要 |
今年度は、7月に民法(相続法)改正が成立し、2019年1月から順を追って施行されることとなったため、 (1)新しい相続法の分析を優先的に行った。(2)フランス法については、多様な財産承継を認めている制度自体の内容を明らかにする検討を始めている。 (1)に関しては、新法下での相続法の理論を検討した。配偶者居住権、遺産分割前における預貯金債権の行使、遺留分の金銭債権化等、新設された制度を中心に検討し、立法により解決された問題点と立法により新たに生じ得る問題点を明らかにした(口頭報告:「権利の承継・義務の承継,仮払い・一部分割・分割前処分」(会議名:有斐閣法律講演会2019「新しい「民法(相続法)」を学ぶ」)2019年2月23日開催、「相続分の指定(新902条・新902条の2)」本山敦編『平成30年相続法改正の分析と展望』金融商事判例増刊1561号(2019年3月)27~33頁)。 (2)のフランス法に関しては、生存配偶者への財産承継方法(居住の保護の方法を含む)として、夫婦財産制の利用、夫婦間での贈与、夫婦間での対応がなされなかった場合の手段等、多様な対応が用意されており、当事者がその時の状況に応じて選択できるようになっていること、遺言の作成や贈与の利用によって公証人の関与が実質的に相続財産の清算を可能としていること等を明らかにした(「『高齢社会』・『家族の多様化』と『相続』 -比較法的考察 フランス-」家族〈社会と法〉34号(2018年7月)29~39頁、口頭報告:「フランスの相続法制について-所有者不明土地問題検討の材料として-」(会議名:司法書士総合研究所第10回業務開発研究部会)2018年11月23日開催、「フランス法における公正証書遺言の方式」金沢法学61巻2号(2019年3月)145~161頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、わが国における新しい相続法の分析を優先的に行ったため、フランス法の研究については、多様な財産承継を認めている制度自体の内容をみるにとどめたが、日本法の分析が予定よりも進展した。
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今後の研究の推進方策 |
フランスにおける多様な財産承継方法が、相続法体系の中でどのように位置づけられているのかを明らかにするため、わが国にはない制度(恵与分割、優先的割当等)が用いられた場合に、遺産分割がいかになされるのか、公証実務での計算方法はどのようなものか、 被相続人が遺言等により実現しようとした内容と、相続人の需要とが矛盾又は対立する場合の処理などを分析・検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、今年度の研究は、フランス法の検討を中心に進め、年度の途中で渡仏し、現地調査をする予定であったが、わが国における民法(相続法)改正の成立を受けて、予定を変更し、今年度は新しい相続法の分析を優先的に行い、フランス法の研究については、多様な財産承継を認めている制度自体の内容をみるにとどめた。次年度以降に、渡仏して、財産承継方法としてどのような方法が利用されているのか、利用されていない制度があればそれはなぜか、各制度を利用した場合の遺産分割の方法、生じ得る問題等を調査する計画である。
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