研究実績の概要 |
日本法については、昨年度に引き続き、相続法改正に関する検討・分析を優先的に行った。具体的には、平成30年相続法改正と、所有者不明土地問題をめぐって法制審議会民法・不動産登記法部会が検討している相続法改正案である。前者については、改正の内容を整理し、残された問題を指摘した(潮見佳男ほか編著『Before/After相続法改正』(弘文堂、2019)204~213頁、大村敦志=窪田充見編『解説 民法(相続法)改正のポイント』(有斐閣、2019)64~83頁、135~148頁、その他)。後者については、相続財産の管理に関する検討を行い、現行の相続財産管理制度の問題点、法制審の中間試案で提案されている新しい財産管理制度の内容と、新制度を導入することにより生じ得る問題、今後の議論の方向性等を指摘した(「相続財産の管理」ジュリスト1543号34~40頁)。 フランス法については、相続以外の財産承継手段としてよく知られた生命保険と、相続法との関係を調査した。わが国では、生命保険請求権の特別受益該当性と、遺留分侵害の問題が問題とされる。フランスでは保険法典に規定があり、わが国の判例に類似した立場にあるかに見えるが、わが国では相続人間の公平に着目して処理をしているのに対し、フランスでは、個々の相続人の生活保障に着目しており、違いがあることも明らかになった(口頭報告: L’assurance-vie, Transmettre son patrimoine : les alternatives a la succession et aux libbralites Seminaire franco-japonais, Nantes, France, 2019年9月、「相続代替としての生命保険の可能性とその限界」市民と法120号70~73頁)。
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