本研究課題の目的は、倒産処理における倒産裁判所と利害関係人及びその手続機関との間の「協働」に着目しながら日本倒産処理法制におけるガバナンスのあり方を理論的に解明することにあり、初年度は、倒産処理におけるアクターの行動を律する規範に着目して、倒産処理の基本原則として近年重視されてきた「債権者平等原則」の法的意義について、続いて手続上のアクターに視点を移し、計画2年度目には最大の利害関係人である一般債権者について、3年度目には裁判所について、民事裁判制度全体を視野にいれつつその法的位置と強制力とを考察した。またこの関連で、仲裁制度を素材に、裁判外手続と裁判上の手続とを接合する「確定判決と同一の効力」の理論的意義をも探求した。 以上の研究成果の総括として、最終年度である2021年度には、倒産処理の基本型である破産手続に焦点を絞り、現行法におけるガバナンスの構造の変化とそこでの手続上のアクターの意義や新たな役割を考察した。具体的には、破産法1条が規定するように現行法において破産手続の法的性質は執行から清算に変容したが、では、従来の“執行”裁判所としての裁判所の役割はどのように変わったのか、またその帰結として、手続遂行上のカウンター・パートである破産管財人には新たにどのような役割が求められることとなったのかを、最判平成18年12月21日民集60巻10号3964頁/裁民222号643頁に手がかりを求めながら考察した。このように現行倒産法制のガバナンス構造の変化とそのことの意味を解明した理論研究はこれまでに皆無であり、倒産法学上の重要性はもとより、倒産処理の実践に与える影響も小さくない。この成果は、2021年11月に日本民事訴訟法学会関西支部研究会において報告しており、最終的には、さらなる調査・分析を加味して論稿にとりまとめ、2023年春に公表することを予定している。
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