研究実績の概要 |
平成31年度(令和元年度)はまず、民事執行法改正に伴い、第三者からの情報取得手続が時効障害事由に追加され(民148条1項4号)、預貯金債権等に係る情報取得に関しては、財産開示手続の前置は必要なく、情報提供を命じる決定は債務者に送達されないため(民執207条)、時効完成猶予の効力が生じたことを債務者が知らないまま手続が進行し、債権者に情報が提供された後に初めて債務者に情報提供が通知され(民執208条2項)、その時に時効更新の効力が発生するという事態が生じ得ることにより、これまでの研究の路線変更が必要となる可能性が出たため、民事執行法の改正過程を精査した。 外国法の研究については、スピロの大著(KarlSpiro, "Die Begrenzung privater Rechte durch Verjaehrungs-, Verwirkungs- und Fatalfristen")のうち、総論部分と時効障害の部分を検討し、総論部分に関して論文を執筆した。 次に、最高裁令和元年9月19日判決(民集73巻4号438頁)が登場した結果、新たに検討を要する問題が生じたため、その検討を行い、強制執行・担保権実行による時効障害についての検討を深めた。その成果は令和2年度に公表される。 また、土地の共同相続人の1人による建物の建築・所有による土地占有と取得時効に関する大阪高裁平成29年12月21日判決(判例時報2381号79頁)と再生計画に基づく再生債務(主債務)の弁済と保証人に対する時効中断効に関する東京高裁平成29年6月22日(判例時報2383号22頁)の判例評釈を執筆し、倒産手続参加による時効障害についての検討を深めた。 以上の成果を踏まえ、『新注釈民法』の時効障害の項目の執筆を終えた。現在、校正段階にある。
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