研究実績の概要 |
本研究は、民事法分野でのフォーマル・ルール、インフォーマル・ルールについて検討するもので、そのためにソフトローについて研究を進めてきたところである。ソフトローについては国際法や行政法の分野での研究が先行しているが、民事法においては非国家主体による規範形成やその運用は通常のことであって、他分野において論じられてきたことが当てはまりにくい側面があった。本研究ではこれまでに民事法も踏まえてハードローとソフトローを連続的に把握するための検討を行ってきたが、民事法の特殊性については必ずしも十分に検討できていなかった。2021年度には、論文執筆の機会を得て、商取引という、上記の問題が一番顕著にあらわれる分野に関して、どのような点において他分野のソフトローとは異なる特殊性があるかについて考えを整理できた(拙稿「ソフトローが働く具体的な場面――商取引分野」法学教室497号25頁、2021年)。 また、本研究の着想のきっかけとなった過去の研究(拙稿「モジュール化と『日本的取引慣行』――調査の仮説と分析(1)」商事法務2142号17頁、2017年)がフランスで翻訳・公刊されたが(Makiko Shimizu, translated by Simon Serverin and Gakuto Takamura, 'Realite et transformation des "pratiques de relations commerciales japonaises" : le cas de l’architecture modulaire', Droit et Societe, 2021, No. 109 pp. 737-761)、その際にフランス語の読者に研究の背景を説明をする必要があり、日本の企業間取引におけるインフォーマル・ルールについてのこれまでの研究動向について追加的に検討を行った。
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