研究課題/領域番号 |
18K01340
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
七戸 克彦 九州大学, 法学研究院, 教授 (00206096)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 民法(相続関係)改正 / 配偶者居住権 / 配偶者短期居住権 / 内縁配偶者 |
研究実績の概要 |
今回の科研費研究における研究対象は、平成30年7月13日法律第72号「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」による民法(相続関係)改正のうち、民法物権法ならびに不動産登記法との関係で影響を及ぼす改正点であるが、とくに問題が大きいと考えられたのは、(1)共同相続における権利の承継の対抗要件に関する民法899条の2の新設規定と、(2)相続編第8章として新設された配偶者の居住の権利であった。 研究期間第1年次(昨年次)においては、このうち(1)民法899条の2に関する検討を行い、①2018年10月6日(土)に西南学院で開催された日本土地法学会2018年大会で報告を行ったほか、②2018年12月8日(土)に日司連ホールで開催された日本登記法研究会第3回研究大会でも関連する内容の報告を行った。それぞれの報告内容については、論文の形で、2019年3月~4月に公表済みである。 研究期間第2年次(本年次)においては、上記のうちの(2)配偶者居住権に関する検討を行い、①2019(令和元)年11月30日(土)開催の日本登記法学会第4回研究大会②2019(令和元)年12月13日(金)開催の関西大学法学研究所「相続と取引をめぐる変容」研究班の講演会ならびに翌14日(土)開催の研究会にて、個別報告を行った。 配偶者居住権制度は、被相続人と同居していた相続人と他の相続人との間に遺産分割を終期とする使用貸借契約の成立を推定する最高裁平成8年判決と、フランスの2001年民法改正を参考に立法されたものである。だが、今回の立法では、フランス法のような、婚姻中や離婚後の配偶者の居住保護をも含めた総合的な検討は行われなかった。一方、今回の立法が参照した平成8年判決は、相続人の中でも、被相続人の「子」の居住に関する事案であって、被相続人の「配偶者」の事案ではないため、「配偶者」保護の観点を欠いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の集中的な検討課題である「配偶者居住権」制度の分析に関しては、昨年度の899条の2に関する検討と同様、学会報告2件のほか、論文2本を執筆しており、さらに、関連する論点として、所有者不明土地問題に係る民法・不動産登記法改正に関しても、連載論文を1本執筆している(所有者不明土地関係の民法・不動産登記法改正では、遺産共有状態を解消して通常共有に移行させることが考えられているが、配偶者(長期)居住権は、遺産共有に関する遺産分割の非訟手続で設定することはできても、通常共有に関する共有物分割訴訟では設定することができない)。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間最終年次である第3年次目では、平成30年7月民法(相続関係)改正で問題となった論点の、今後の法改正への影響について検討する。899条の2、配偶者居住権のいずれの論点とも、今般改正作業中の民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)改正と密接に関連しているところ、少なくとも現時点における法制審議会・部会の審議においては、両者の関連性・影響関係についての考察が不足しているように感じられる。すでに本年(令和2年)3月締切の論文(本年7月刊行予定)において、この問題を検討しており、現在は、6月締切(11月刊行予定)の続稿の執筆に着手している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の書籍購入費につき端数241円が生じたため、2020年度に繰り越した。
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