研究課題/領域番号 |
18K01342
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
楪 博行 白鴎大学, 法学部, 教授 (20331332)
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研究分担者 |
栗山 修 神戸市外国語大学, 外国語学部, 名誉教授 (00170093)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クラス・アクション / 信託 / 証券 / 実体法 / 手続法 / 法実現 |
研究実績の概要 |
本年度は、アメリカの私人による法実現手段であるクラス・アクションがもたらした問題の検討を研究対象とした。とりわけ、クラス・アクションから仲裁へ傾斜した理由およびその対応の是非と、仲裁手続がクラス・アクションに代替する旨の契約の合法性について検討を加えた。一般的に、当該契約は非良心的契約とされ取消原因になると考えるのが、多くの州裁判所の傾向であった。しかし、合衆国最高裁判所は当該契約を合法であると判断した。これは、手続的手法である仲裁が実体法上の判断基準に優越すると認めたことになる。合衆国最高裁判所がこの判断を行った根拠は、連邦仲裁法が非良心的契約を認める州実体法に専占することであった。つまり、連邦法が州法に優越する原則を根拠とするものであり、手続法が実体法に優越することを示すものではなかった。消費者契約クラス・アクションの増加に対応するための、実務的要請による判断であったと考えられる。 上記のクラス・アクションを媒介とする手続法と実体法との関係にかかる現状分析に加え、本年度は、上記研究過程で現れた新規の問題について検討を加えた。実体法が手続法の補完を行ってきた歴史的分析であり。過失による不法行為法のうち、過失判断の枠組となる一般通常人基準と損害賠償の範囲を対象とした。検討の結果、これらの対象は19世紀から20世紀にかけて不法行為法原則形成の前提となり、さらに手続的に民事陪審の有効性を担保していたことが理解できたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画が達成できたとともに、研究過程で現れた新規の研究対象に対して検討を加えることができた。したがって、本年度は重要といえる新規の対象を追加的に検討できたため、今後の研究の進捗を大幅に促したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究対象として、アメリカにおける現行の証券関係法と信託の2つの法領域での実体法と手続法の関連を検討する予定である。 まず、証券関係法でクラス・アクションが否定されていない現状を分析し、実体法による手続法の補完と担保機能を検討する。証券関係法の手続法的影響を検証することを主眼とする。具体的には、証券関係法違反に対してクラス・アクション手続を定める私的証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act)が、いかなる私人による法実現の視点をもち、証券訴訟統一基準法(Securities Litigation Uniform Standards Act)が規定する連邦法の州法への先占がそれぞれ私人の法実現に対していかなる影響を与えたのかを分析し検討する。 次に、信託法上の手法をクラス・アクションに代替させることの検討である。信託法の基本構造は、受益者は受託者に対して何らかの影響を行使するものではなく受益者間の調整を行う性質をもつ。証券関係法では株式ならびに社債の取引市場の存在を前提とするが、信託法ではそれに該当する市場は見られない。かような市場の不在のため、クラス・アクションの構成員と受益者は証券取得者などの第三者により支配されることはない特徴をもつ。以上を前提として、クラス・アクション上の請求の信託財産への代替を、クラス・アクションにおける離脱権との関連性から検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた必要な物品の値上がりにより、当該年度の購入を延期し予定使用額を次年度に繰り越して、予算調整を行って次年度中に購入することに変更した。
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