研究課題/領域番号 |
18K01344
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
大坂 恵里 東洋大学, 法学部, 教授 (40364864)
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研究分担者 |
若林 三奈 龍谷大学, 法学部, 教授 (00309048)
神戸 秀彦 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (70195189)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大規模災害 / 福島原発事故 / 賠償 / 補償 / 責任 / 損害 / 救済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、福島原発事故賠償制度を研究の基軸として、被災者の生活再建および被災地域の再生に迅速かつ適切に資する、人災ないし人為的要因が寄与する大規模災害全般に応用可能な賠償・補償制度の一つのあり方を示すことである。(1)原因者の法的責任を明らかにし(責任論)、(2)被害の実態を把握し、回復されるべき損害として法的に構成し(被害・損害論)、(3)被害回復にかかる賠償・補償方法のあるべき姿を検討する(救済論)過程において、大規模災害に関する国際的な研究動向や問題関心を反映させる研究体制をとっている。 今年度は、責任論班、被害・損害論班、救済論班の各班において、情報の集約・分析および課題の絞り込みを行い、次年度以降における検討の基礎とする作業を行った。その過程で、研究会を6回開催し、各班の検討内容について情報を共有した。そのうち1回は福島で開催した。また、東京で開催した際にも、原発事故賠償の被害者らや訴訟・ADRに関わる弁護士らと意見交換の機会を得た。各回のテーマは、原発事故賠償判決の検討(4/28、明治大学)、ふるさと喪失慰謝料の算定(6/23、明治大学)、原発事故賠償の課題と展望(7/29、福島大学、第4回「原発と人権」全国研究・市民交流集会の分科会として開催)、「ふるさとの喪失/剥奪」被害調査研究委員会の研究成果(11/4、明治大学)、原発事故に対するいわき市民の意識とコミュニティ分断(2/28、東洋大学)、原賠法改正問題(3/2、神戸大学)である。具体的な成果としては、『原発事故被害回復の法と政策』の掲載論文ほか、複数の論文を公表した。また、カナダで開催された国際学会において研究報告を行い、アメリカにおいて大規模災害の賠償・補償制度の資料収集・ヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画は、責任論班における事故の発生に係る法的責任の研究、被害・損害論班における被害実態の把握や被侵害法益および損害に係る法理論の研究、救済論班における被害回復に係る賠償・補償方法の研究のいずれについても、国内外の学会・研究会での報告や、公表論文の内容から、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的・研究実施計画を変更する必要はないと考えるが、現状以上に力を入れて取り組むべき課題もある。福島原発事故賠償制度に関して、長期化・深刻化している被害の実態の継続的な把握、集団訴訟の地裁判決・控訴審判決の分析、原発ADR制度の再構築に向けて、国内外の大規模災害の賠償・補償制度を参照しながら、本研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入費、研究分担者・研究協力者の旅費・謝金、研究会会場の借用料等において節約に努めたこと大きい。次年度は、交付額が今年度の交付額よりも少ない一方で、外部報告者の招聘と国際学会への参加にかかる費用が相当程度必要となることが見込まれるため、次年度の直接経費のうち、旅費、謝金、その他(学会参加費)の増額分に充てることを計画している。
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