本研究は、フランスの会社法制および資本市場法制と欧州連合(EU)の会社法制および資本市場法制とが相互に影響しあう過程および構造のなかで、フランスおよび欧州連合の会社法制および資本市場法制が展開していく方向性を具体的な問題に即して明らかにすることを目的にしている。 2018年度は、フランス企業法にかかわる3件の判決を研究しその成果を公表した。さらに、株式大量保有の報告義務およびその義務に違反した株主の議決権の当然の停止の制裁の適用にかかわる判例法理を研究し、その成果を2019年度に公表した。2019年度はさらに、フランスの4件の立法を研究しその成果を公表した。2019年度はまた、2014年4月16日の欧州連合の規則が定める資本市場濫用規制の具体的な内容の検討を、欧州連合の構成国であるフランス、ドイツおよび英国における対応の状況も含めて検討し、その研究成果を2020年度に公表した。 以上の研究を踏まえて、2020年度はさらに、まず、「上場会社の株主の一定の権利の行使」に関する2007年の欧州共同体の指令第2007/36号を改正する2017年5月17日の欧州連合の指令第2017/828号が定める上場会社における「関連当事者取引」に対する規制について、その指令が定める制度の内容をその形成過程も含めて検討し、さらに、その指令の制度に対するフランスおよびドイツにおける立法の対応について検討を行ない、その研究成果の公表の準備をすすめている。また、2020年度には、企業の人権および環境に配慮するべき「警戒義務(devoir de vigilance)」を法定したフランスの立法、ならびに、covid-19の感染拡大を抑える規制のもとで会社その他の法人の総会および指揮機関の開催を可能にする立法ならびに法人の決算等の期限の対応を定める立法について研究を行ない、その成果を近く公表する準備をすすめている。
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