研究課題/領域番号 |
18K01357
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本間 学 金沢大学, 法学系, 准教授 (80387464)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国判決の承認・執行 / ブリュッセルIa規則 / 執行許可手続 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、ブリュッセルIa規則における執行許可手続(Exequaturverfahren)の廃止とそれに代わる新たな規律方法を分析し、ブリュッセルIa規則における外国判決の執行にかかる債権者利益と債務者利益の調整メカニズムの特徴を明らかにした。令和元年度は、そこでの検討結果をドイツ固有法の観点から分析し、EUのような超国家的な法的枠組みが存在しない国際民事訴訟法領域で、かかる調整メカニズムをどの程度参考にしうるかを明らかにすることが検討課題であった。そして、関連文献分析とドイツ法系民事訴訟法担当者会議でのドイツ法研究者と意見交換により、ブリュッセルIa規則の執行許可手続の廃止に対するドイツ法研究者の反応を探ることで、この課題に取り組む計画であった。さらにこの当初計画に加え、トルコ・イスタンブールで開催予定であった日・独・トルコ国際シンポジウム「民事裁判における法治国家の要請」において「外国判決の承認と法治国家」と題する報告(ドイツ語)をする機会を得、意見交換をすることも予定していた(報告原稿作成済み)。もっとも、いずれの学会・シンポジウムも、新型コロナウィルス感染症の影響により中止となり、予定されていたドイツ人研究者との上記課題に関する意見交換も、シンポジウム報告も実現しなかった。 以上のように、予定していた研究計画の一部は実施できなかったものの、令和元年度における文献調査分析から、以下の点が明らかとなった。 1 構成国間の相互信頼を基礎とした執行許可手続の廃止は、法治国家原則と緊張関係に立つ可能性があり、この観点からの考察が必要である。 2 ブリュッセルIa規則は執行許可手続を廃止はしたが、執行国において従来の承認拒絶事由の審査を残置している。このことは、執行許可手続の廃止が、直ちに外国判決の承認執行の審査の排斥を意味するわけではないことを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、2020年3月に開催予定であったドイツ法系民事訴訟法担当者会議に参加し、ブリュッセルIa規則における外国判決の執行判決許可制度の廃止に関する評価について意見交換をする予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響で学会そのものが中止されたため、実施できなかった。また、2020年3月にイスタンブールで開催予定であった日本・ドイツ・トルコの国際シンポジウム「民事裁判における法治国家の要請」において、「外国判決の承認と法治国家」と題する報告をし、ドイツ法の研究者とのこのテーマでの意見交換をすることも計画していたが、これも同じ理由からシンポジウムが中止となり、実現が叶わなかった。 さらに、平成30年度に出版・入手予定であったブリュッセルIa規則に関する重要文献の出版が、再延期されたため、この文献の分析も実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツで開催される学会での本研究課題に関する意見交換は、新型コロナウィルス感染症の収束が見通せない現時点では、次年度中に実施可能であるか見通しが立たないが、その可能性を模索したい。場合によっては、電子的通信手段等を用いて意見交換等を行うことも考えたい。 少なくとも、今年度の文献調査分析から明らかとなった結果をさらなる追加的な文献分析により精度を高めたうえで、次年度の検討課題である日本法の立法論的検討に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたドイツ法系民事訴訟法担当者会議が新型コロナウィルス感染症の影響で中止されたため、同会議出席にかかる海外出張旅費が未執行となったこと、平成30年出版予定の関係重要文献の出版が再延期となったため、同書籍にかかる物品費が未執行となったことによる。 海外出張については、新型コロナウィルス感染症の状況をにらみつつ、次年度、ドイツ民事訴訟法関係の別の学会への参加を模索したい。物品費については、当該書籍の購入費に充てたい。
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