今年度、本研究テーマに関する議論として、養育費不払い問題解決のための支援・介入について、その必要性および問題点について考察した。 必要性については、①子どもへの後見的関与、②当事者の力の不均衡、③現制度下における養育費受給の実現性の低さ、手続き負担の重さ、④「家」制度的思考からの脱却、⑤社会の変化への対応、⑥子どもの権利条約締約国としての養育費支援責務の6点に整理し、それぞれの項目についてこれまでの議論を踏まえ考察を行った。 そして、問題点については、①「法は家庭に入らず」との関係性、②養育費不払い問題を特別扱いすること、③国家が介入する事から生じる負の効果、④私的義務遂行の社会化(いきすぎた“法化”)の4点に整理した。その上で、①については、「法は家庭に入らず」の原則が生成された歴史的経緯を踏まえ、現状の背景等は異なることから絶対的な原則ではないこと、②については、対象となる養育費不払い問題が、将来社会を支える子どもの問題であること等、③については、手続き保障の必要性、④については、支援を充実させることにより、それぞれの問題点に対処できるものと結論付けた。 さらに、これまでと同様、ドイツ法からの示唆としては、ドイツの扶養料立替制度の理解として、ChristianGrobe『UVG:Unterhaltsvorschussgesetz』(2020)を読み進め、子の福祉が危険な場合において国家が介入を規定するBGB1666条の規定について研究を進めた。
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