研究課題/領域番号 |
18K01359
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
尾島 茂樹 金沢大学, 法学系, 教授 (50194551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クレジット・カード / チャージ・バック |
研究実績の概要 |
令和2年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、移動しての資料収集に支障を来したものの、手元にある文献、購入できた文献やインターネットを通じて入手した文献を中心に、可能な限り研究計画に沿って研究を進めた。 クレジット・カード(以下、「カード」という)の不正使用の防止を検討するに当たっては、カード取引のグローバル化の影響を抜きにはできない。カードは、国際ブランドを通じて世界中で使用できるといっても過言ではない。このような観点からは、紛争処理においては、わが国の法制度のみによることはできず、他国の法制度や国際ブランドによる取り決めの影響を排除できない。 以上の観点から、国際ブランドによるチャージバックの可能性を考えた場合、わが国の加盟店の取引実務が現在のように、ほぼ署名を確認しない、という状態でよいのかが問題となる。言い換えれば、日本型のチャージバックは国際ブランドによる国際ルールに対応できるのかという問題である。たとえば、アメリカで発行されたカードは、アメリカのカード約款により、アメリカの法律が適用される。わが国で使用されたカードについても同様である。アメリカの法律や約款では、カード会社がカード利用代金を請求するにあたり、不正使用についてカード会社が立証すべき厳しい要件がある。わが国の従来の加盟店実務は、アメリカで発行されたカードには対応し切れていない。 以上の観点から、従来のわが国における実務の問題点を指摘する以下の論文を公表した。尾島茂樹「クレジット・カード取引と社会のグローバル化」(金沢法学63巻2号145-157頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、クレジット・カードの不正使用に関する問題、チャージバックに関する問題の検討を進めるとともに、今年度は、不正使用にかかわるチャージバックに関する実際上の問題として、加盟店における実務を取りあげ、この問題を扱う論文を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、さらにチャージバックを活用したクレジット・カードの不正使用防止について検討を進める。この際、近時、増加しているキャッシュレス取引のための他の媒体との比較にも注意を払いながら検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、移動を伴った資料収集を見合わせたため、旅費の支出がなかった。また、これに伴い複写費の支出がなかった。 令和3年度における新型コロナウイルスの感染状況がどうなるかわからないが、繰り越した助成金は、研究課題に伴って生ずる資料の購入や資料収集の旅費に充当する予定である。
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