研究課題/領域番号 |
18K01361
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
栗田 昌裕 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (30609863)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 民法 / 情報法 / 人格権 / 著作権 / 著作者人格権 / AI / サイトブロッキング |
研究実績の概要 |
本研究の問題関心は、民法学の視点から情報の法的規律の私法的側面を体系的に検討し、将来の課題について適切な権利利益の衡量を行う基礎的な理論を構築することにある。この観点からすれば、昨今、発展の著しい人工知能(AI)の応用についても一定の考察を行うことが必要と考えられ、「ロボティクスに関する民事法準則についての委員会への勧告を附帯する2017年2月16日欧州議会決議」(8_TA(2017)0051)及び欧州議会政策部門調査報告書「ロボティクスにおけるヨーロッパ民事法準則」(PE 571. 379)を素材として、AIに法人格を承認したり、その責任を追及することは、少なくとも現時点においては意義に乏しいことを検証した。また、より具体的かつ喫緊の課題について立ち入った検討を行うため、自動運転車に起因する事故において、いかなる帰責原理によってどの法主体にどのような責任を帰属させるべきかを論じた。また、所期の目的の一つであった情報に関する人格的利益についても検討を進め、船橋市西図書館事件を素材として、公立図書館における図書の廃棄と著作者の人格的利益との関係についても考察し、著作者人格権とは異なる人格的利益として法的保護の対象となるものの、その範囲は限定されていること、政治的言論に限らず保護される余地のあることなどの知見を得た。また、とりわけ海賊版サイトに関して重要性を増しているサイトブロッキングについて、これを民法上の物権的妨害予防請求権の類推適用によって認めていたドイツ法の議論を参照し、テレメディア法改正による免責規定とブロッキング請求権導入後の議論を検討した。これらの作業と並行して情報法の体系書(共著)を民法(債権関係)改正、TPP整備法、平成30年著作権法改正法等の近時の重要な法改正に対応して改訂し、さらなる体系化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報に対する権利を体系化し、その侵害に対する救済方法を検討するとともに、情報財の円滑な流通との調和を図るという所期の目的から比較すれば、人工知能技術(AI)の急速な発展と普及という社会の変化に対応するために研究対象を関連する範囲においてやや拡張したものの、情報に対する権利を民法学の視点から体系化するという長期的な目的のために必要な検討を蓄積しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当年度は多角的な視野から情報に対する権利の考察を試みたが、とりわけ、サイトブロッキングの法的根拠として民法上の物権的予防請求権が用いられているというドイツ法の議論は、情報に関する伝統的な法領域である著作権法学と民法学との架橋を前提とするものであり、これまで日本法において議論の乏しかった交錯領域に有益な示唆を与えるものと期待できると考える。進展の著しい人工知能(AI)分野へのフォローアップも図りつつ、ドイツ法における物権的予防請求権概念の成立時期であるドイツ民法典制定時の議論や、さらにはその法的性質に大きな影響を与えたローマ法の否認訴権(actio negatoria)についても考察を深め、民法学に定位した着実な議論の展開を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた出張(研究報告)について先方から交通費等の支給があったため、旅費相当額として未使用のままにしておいた金額について余剰が生じた。新年度は、京都から名古屋への転居に伴い、定期的に参加している京都の研究会(民法学のあゆみ研究会、京都大学ローマ法研究会等)への参加に出張費を必要とすることとなることから、これに充当する。
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