研究課題/領域番号 |
18K01361
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
栗田 昌裕 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (30609863)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 差止請求権 / 物権的請求権 / プライバシー / 著作者の権利 / デジタルプラットフォーム / デジタル消尽 / 情報法 / 基本権衡量 |
研究実績の概要 |
本研究の問題関心は、民法学の視点から情報社会における人格権の保護と情報財の流通に関する法的規律について体系的に検討し、採用可能な基礎理論を構築することにある。本年度は、昨年度に引き続き、人格権の一つであるプライバシーの保護を巡る問題として、デジタルプラットフォームにおける個人情報保護のあり方を論じ、民事判例の検討を行った。また、情報財の流通に関しては、第一に、著作権に基づく差止請求権の範囲について、直接侵害と間接侵害の区別という不法行為法に由来する区別を基礎として差止めの可否を判断する従来の枠組みをドイツ法との比較法及び民法との領域横断的な検討を用いて批判的に検討した。その結果として、沿革的、原理的には差止めの範囲を「直接侵害者」に限定すべき理由はなく、民法上の物権的請求権と同様に、「その者の支配に属する事実によって著作権等の侵害状態を生ぜしめている者」にまで拡大する可能性があること、その範囲の画定に当たっては、財産権保障、営業の自由及び表現の自由等の基本権を衡量することが有益であることなどの示唆を得た。第二に、EU法及びドイツ法との比較法によって、著作物の無体的流通について消尽の原則の適用すべきかという、いわゆるデジタル消尽の問題について検討した。その結果として、現代社会においてはデジタル消尽を論じる意義そのものが乏しくなっており、消費者法、競争法及び契約法の視点からプラットフォーム規制を整備し、エンドユーザーの権利を強化することが望まれるとの結論を得た。これに関連して、アーキテクチャとしてのプラットフォームの規制作用に着目し、デジタルプラットフォームがエンドユーザーの権利を制約する方向でも拡大する方向でも機能し得ることから、その権利を役権をモデルとする準物権的な権利として設計するドイツ法の近時の展開が将来の法設計にあたって一定の示唆を与え得ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により一時的に図書館が閉鎖され、又は利用者の範囲が限定されるなどしたために文献の検索に支障が生じ、当初に予定していた国内及び海外での出張も実行できなくなった。所属研究機関の所在する愛知県は感染者数も多く、緊急事態宣言やまん延防止措置の影響で研究のみならず業務の全般に支障が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
公表を準備している論稿が複数あり、可能な限り早期にこれを公刊する。コロナ禍の収束により授業は対面授業となったが、未だに在外研究や出張の見通しが立っていない。もっとも、電子会議システムを利用した研究会の開催が常態化し、かえって移動時間を問題とせず多様な研究会への出席が可能になった側面がある。そうした意見交換の機会を積極的に利用することにより、新しい態勢で研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により図書館の利用制限や研究会や学会の中止があり、予定していた在外研究等を中止せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。コロナ禍が収束を見せつつあり、学会や研究会における研究成果の公表や研究資料の入手のために使用することを予定している。
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