前提として、平成29年の民法改正では、一方で、組合代理に関する規定が整備されたものの、他方、第三者の保護を中心に組合法においては解釈によって埋められるべき欠缺が、代理法によって解決されるべく存置されることになった。 本研究は、こうした組合の代理法における第三者保護について、主としては、包括代理権が与えられる業務執行者の定義、業務執行者の代理権の範囲、業務執行者が置かれない場合の常務を基礎とした代理法による保護、これらについて代理その他の民事法の体系から明らかにした。たとえば、業務執行者の定義については、必ずしも明確でないところがあるところ商法上の支配人のように包括的代理権の有無と主任者としての地位のいずれに注目するかの議論が参考になることを明らかにした。また、常務を基礎にした代理法による保護では、表見代理が考えられるところ、その慎重な拡大が必要なことを明らかにした。 副次的には、組合代理の任意代理性を支える組合契約の性質を、合意に基礎を置く契約の一種であるという観点から明らかにした。 主たる成果である、包括代理権が与えられる業務執行者の定義、業務執行者の代理権の範囲、業務執行者が置かれない場合の常務を基礎とした代理法による保護の分析は、これまで一部注釈書を除けば包括的に分析されることがなかった点について、体系的に分析を行い法的安定性を向上させるという意味がある。特に、組合法においては判例が少なく、この結果として判例を中心とした法理の解明に限界があったところ、代理法との関連を見据えつつ学理的な観点から法理の解明を進めたことに意味がある。 副次的に明らかにした合意に基礎を置く契約の一種としての組合契約という観点は、組合契約の分析にその他の契約法理を使える基礎を与える意味がある。また、この点の裏返しであるが、組合法理を通常の契約法の解釈にも使える可能性を開く意味がある。
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