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2018 年度 実施状況報告書

信用貨幣論と有価証券法理の統合にもとづく新たな決済法構築のための基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01369
研究機関中央大学

研究代表者

伊藤 壽英  中央大学, 法務研究科, 教授 (90193507)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード有価証券 / 決済手段 / 決済システム / 決済サービス / 電子決済 / 振込 / クレジットカード / ネットワーク責任
研究実績の概要

近時の金融審議会金融制度スタディ・グループによる機能別・横断的規制体系に関する中間整理や、EU決済サービス指令2を受け、原因取引と、その清算のために利用される決済手段と決済システムで構成される決済取引を措定したうえで、それぞれの決済手段の機能を整理した。そのうえで、「貨幣」の概念に関する通説(商品貨幣説)に対して、名目主義・表券主義・計算単位説による理解が妥当することを確認し、貨幣とは、原因取引の一方当事者が、その債務を支払うために負債を発行し、それを受領した相手方がさらに自己の第三者に対する債務の弁済のために利用できること、すなわち流通することによって、社会的に蓄積された信用取引の連鎖を仲介するが、最終的に銀行ネットワークの中で清算(債権債務関係の消滅)を目的するものである、という整理をした。
この貨幣概念の定義により、振込における預金、手形小切手といった有価証券、クレジットカード、電子記録債権、電子マネー、仮想通貨(暗号資産)も、機能的には「貨幣」に包含しうること、しかし、貨幣として機能するには、一定の決済システムにおける決済手段として、社会的に信認されることが必要である、ことが理解された。そして、新しい決済手段(とくに電子的手段)に関する法的紛争については、これまで蓄積されてきた有価証券法の解釈、判例法理や銀行実務を参照することが可能であり、新たな決済手段への適用可能性と妥当性を検討した。さらに、決済システムについては、そのシステム的特徴にもとづく新たな法規範(たとえばネットワーク責任など)の創造が必要であることを明らかにし、それらによって取引社会における信認を得られることの論証を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

金融審議会やEU指令等により、決済手段を機能的に統一し、法的には横断的な枠組みが必要であることが国内外の趨勢であることは認識された。また、有価証券法理を基礎とした規範の有効性も確認されたので、当初の計画どおりに進捗しているものと考える。

今後の研究の推進方策

新たな決済手段と決済システムについて、実務の状況を調査し、今年度に整理した法規範の射程を検証する。とくに、情報技術・金融技術を裏付けとしたシステムに関しては、個別取引法理と異なる規範が必要となるので、技術とシステムに関する知識の修得と連動させて研究を進めていく予定である。また、これらの技術により決済取引が容易に国境を越える性質を備えるため、信用貨幣理論による国定貨幣説とどのように整合性を図るかを、あらかじめ理論的な課題として設定しておく必要がある。たとえば、EU決済サービス指令や、仮想通貨を定義に含めるアメリカ統一商事法典の改正動向も視野に入れ、比較法的研究の必要性も考慮する予定である。

次年度使用額が生じた理由

他の予算で購入した図書や他の予算で行った調査が本研究課題にも資するものであったため、その分の費用が節約できたが、次年度には、研究と実務の国際的動向を調査するための海外出張費用の一部として使用する。なお、当初、研究用に購入を検討していたPCについては、年度末に購入したため、学内経理処理の都合で次年度に繰り越されている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 有価証券法理の再検討ー信用貨幣論からのアプローチ2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤壽英
    • 雑誌名

      比較法雑誌

      巻: 52巻2号 ページ: 179-210

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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