• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

信用貨幣論と有価証券法理の統合にもとづく新たな決済法構築のための基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01369
研究機関中央大学

研究代表者

伊藤 壽英  中央大学, 法務研究科, 教授 (90193507)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード決済手段 / 決済システム / 有価証券法理 / 両面市場 / 暗号資産 / キャッシュレス社会 / 電子マネー / 決済サービス
研究実績の概要

前年度においては、貨幣理論と有価証券法理の分析から、近時の信用貨幣論によれば、同様の機能を有する決済手段については、統一的な法的枠組みを設定することが利用者の便宜に合致するが、そのような法的枠組みの基礎は、一定の決済システムとそれに対する社会的信用であることを明らかにした。
そこで、”Same Risk, Same Rule”の原則のもとで、新たに成立したシンガポール決済サービス法((2019年)について、サーベイを行ったが、本研究への示唆は以下の通りである。同法の建て付けは、キャッシュレス社会を標榜して、横断的的統一的決済サービス法制を志向するわが国にとっても、参考にはなる。しかし、シンガポールでは、通貨監督庁(MAS)がマーケットをモニターし、監督上の問題に素早く対応できるのに対し、規模の大きい日本で、それぞれ独自の市場とルール形成をしてきた決済手段(たとえば手形小切手とクレジットカード)を、ただちに同一枠組みの下で規制・監督できるか、いっそうの検討が必要となる。
他方で、決済手段の機能を把握するためには、伝統的な貨幣理論・有価証券法理に代わる理論的枠組みも必要である。とくに、わが国の伝統的な有価証券法理は、決済システムの背後にある経済構造とその発展を合理的に把握し、理解することを妨げているのではないか、との視点から、「手形理論のバイアス」についても、本研究で明らかにした。
以上を踏まえて、本研究は、決済取引の構造的特徴と法的ルールを整理し、決済システムと社会関係を分析するという基礎的作業を終えたところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

統一的横断的ルールを立法化しているシンガポール決済サービス法(2019年)の成立を機に、本研究の方向性を検証できたのは有益であった。また、比較法的な視点も踏まえ、法規制の枠組みと暗号通貨の関係について示唆を得たので、本研究が設定した課題を順調に進めているものと考える。

今後の研究の推進方策

基礎的作業を踏まえ、暗号通貨・電子的決済手段に関する新たな問題について研究を進めることとする。たとえばGAFAのような巨大プラットフォームが決済サービスを提供することによって、いわゆる両面市場を支配する可能性が指摘されている。標準的なプロトコルで、効率的なサービスを、安価に提供できることは、一見して「善」のようであるが、いったん問題が発生した場合のリスクは、メガバンクの破綻に比肩しうるものであろう。しかも、その影響は、インターネットを通じてグローバルに拡大するという内在的な特徴をもつ。シンガポール決済サービス法は、経済効率性を目的とする制度設計には、強力かつ実効的な監督機関が必要であることを示唆しており、その知見を踏まえて、横断的統一的法規制の可能性・範囲および実効性担保への示唆を得ることが、本年度の目標となる。なお、海外研究者へのインタビューに代わる研究方法を模索しているところである。

次年度使用額が生じた理由

英米等に出張し、研究者・実務家との調査インタビューを予定していたが、新型コロナウィルスの影響で、それらの計画が中止となったため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 決済取引法制に関する一考察2020

    • 著者名/発表者名
      伊藤壽英
    • 雑誌名

      日本比較法研究所設立70周年記念『グローバリゼーションを超えてーアジア・太平洋地域における比較法研究の将来』所収

      巻: 日本比較法研究所研究叢書120 ページ: 51-74

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi