2023年度は、(論文)「中小企業再建における株主の権利保護の理論的検討と制度的選択」清華法学(中国)2023年第6期を公表した。また、「国際倒産における承認援助の要件・効果に関する一考察」をテーマとして、民事訴訟法研究会関西支部と東京大学民事訴訟法研究会において報告(2023年2月、3月)を行い、2024年前半中には公表される見込みである。 次に、中国最高裁判所の裁判官で、中国の個人倒産法草案作成の責任者である方の執筆依頼を受けて日本の個人倒産に関する裁判例の六つの評釈、オーストラリアの個人倒産に関する五つの裁判例の評釈を執筆し結果、2024年1月に法律出版社において出版された。 これらの裁判例のうち、本研究課題と特に関連性が強いのは、免責の効力(国内外の効果)、破産財団の範囲(属地主義か普遍主義か)の問題である。これらの問題は国際倒産領域でも重要な課題となっており、中国、日本、オーストラリア法における裁判例を通じて関連問題の立法、解釈、実務について詳しく考察することは、日本の解釈論上、立法上同様の問題を考える上でも重要な意義を有するものであった。国際会議での報告としては、2023年8月に、(私的整理・倒産ADR)をテーマとして、上海仲裁委員会・華東政法大学が主催したシンポジウム(上海)において、報告を行った。研究会報告として、「国際倒産における承認援助の要件・効果」に関する一考察」(民事訴訟法学会関西支部と東京大学民事訴訟法研究会2023年2月、3月報告)がある。翻訳・通訳として、「倒産法の近時の検討課題(IT化を踏まえて)」(第10回日韓民事訴訟法合同大会における日韓報告者の翻訳・通訳担当)等がある。なお、民事訴訟法の分野についての判例評釈(金春執筆担当(上訴・再審関係判例A38からA42)、『民事訴訟法判例百選(第6版)』(有斐閣・2023))の成果もある。
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