研究課題/領域番号 |
18K01383
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
長塚 真琴 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10281875)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス著作権法 / グラフィックデザイナーの著作権 / フランスの著作権侵害訴訟 / 偽造差押 / ベルヌ条約 / ヴィクトル・ユゴーと著作権 |
研究実績の概要 |
(1)2018年度前半は、「フランスにおけるグラフィックデザイナーの著作権」についての研究をおこなった。そこでは、フランスでは日本より著作物と認められるグラフィックデザインが多いこと、その著作権の保護は実体・手続面で手厚いこと、デザイナーとクライアントとが著作権譲渡契約を交わす慣行が定着していることを明らかにした。この研究の成果は短い紀要論文として発表済みであり、その要旨は研究報告会で発表した。 (2)中盤は、「フランスの著作権侵害訴訟」について研究した。特に、本質的に提訴前の証拠収集手続でありながら、侵害仮差止の手続としても用いられている「偽造差押」について、詳細に論じた。これはいまだに論文化していないが、ALAI Japan(国際著作権法学会日本支部)および台北大学主催の台北市における研究会で発表した。 (3)後半には、「ベルヌ条約の成立過程と基本精神」について、国立音楽大学で講義した。講義録はすでに刊行されている。ここでは、フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーが果たした役割を中心に、著作権の国際秩序が、19世紀フランスの著作権法をベースに作り上げられる様子を明らかにした。 (4)そして終盤には、名古屋弁護士会からの依頼により、フランス著作権法全般についての概説講義をおこなった(未公刊)。 以上4つの実績のうち、(1)は本研究課題の各論と位置づけることができる。それ以外は、フランス著作権法の研究ではあるが、本研究課題の関わりは間接的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ALAI Japan、台北大学、国立音楽大学、名古屋弁護士会の依頼に応えて、求められるフランス法の知識を提供することに、予想以上の時間がかかった。また、勤務先で大学院の教務担当という重要な役職に就き、2018年6月からは労働組合の委員長にも選出された。そのため、研究時間を確保することが困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年3月末には、渡仏して同世代の研究者や大学院生から、本研究課題の調査に必要ないくつかの事項につき、最新の情報を得ることができた。その1つが、フランスのジャーナリストの契約についてである。フリージャーナリストは自らの書いた記事の著作権を有するが、それは、法定ライセンスに近い形で、掲載媒体を運営する企業に譲渡される。譲渡以後は、ジャーナリストはあらゆる利用に反対できない。そして、譲渡対価はジャーナリストの労働組合との交渉で決まるということである。 2019年度は、この情報を掘り下げることから始めて、本研究課題に沿った研究を進める。
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