研究課題/領域番号 |
18K01385
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
毛利 透 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (60219962)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | インタ-ネット / 表現の自由 / 匿名性 / プロバイダ責任 / ヘイトスピーチ |
研究実績の概要 |
2021年度は、当初の研究計画における最終年度であったが、新型コロナの流行が続いたため、残念ながら2020年度にひきつづき、Netzwerkdurchsetzungsgesetz(NetzDG)の執行についてのドイツでの調査はできなかった。また、2020年から同法の改正が政治課題となっていたが、合憲性についての疑問などから法改正の成立が遅れ、2021年中にようやく成立に至った。この改正は、同法の性格を大きく変える可能性のある重大なものであるが、立法の遅れのため、改正後の同法の分析も十分に行うことはできなかった。こうして、研究期間の延長が不可避となった。 このような中、2021年度には、改めてインターネット上での活発な表現活動が立憲民主政にもたらした影響につき、社会学分野における知見を参考にしつつ、基礎的な考察を行うことにした。具体的な立法の有効性を評価するためにも、インターネットによって政治的言論空間がどのように変貌したのかを把握しておく必要性は大きい。社会学的な議論の参照は、本研究計画の重要な軸をなすものであるが、この段階でそれを整理しておくことで、インターネットについての法的規律のあるべき姿について最終的な見解をまとめる土台を構築しておくことにしたのである。そして、この考察から、法的規律において留意しておくべき点について有益な着眼を得ることができた。論文は2022年春刊行の「論究ジュリスト」38号で公表される予定である。 そのほか、2021年度においても、ジャーナリズムの専門家やインターネット上の「炎上」の実態について調査している専門家らの報告を聞く機会をもうけ、インターネットの影響についての知見を広めることを心がけている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり、2020年度に続いてNetzDGの執行状況についてのドイツでの現地調査ができなかった。また、ドイツでの法改正の遅れもあり、法的枠組みの分析も本格的に行うことができなかった。 上記した基礎理論的研究を行い、一定の成果を挙げられたと考えるが、研究計画を完遂することはできず、期間延長を求めることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度には、待望のドイツでの調査を行う予定である。この機会を最大限いかしたいと考えている。そして、ドイツでの対応を参考にしつつ、これまでの研究もふまえて、インターネットの法的規律についての基本的な方針を体系的に示すつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行が続いたため、予定していたドイツでの現地調査ができず、またNetzDG改正の遅れゆえに、関連文献の出版や購入にも遅れが生じた。2022年度にはドイツでの調査を実行し、さらに必要文献も十分購入して、研究計画を完成に導くつもりである。
|