研究課題/領域番号 |
18K01386
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丸山 英二 神戸大学, 法学研究科, 名誉教授 (10030636)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インフォームド・コンセント / 個人情報保護 / 倫理審査委員会 / 生命倫理 |
研究実績の概要 |
令和2年度においては,医学研究に適用される倫理的要件を定める法令・指針に関して,これまで主として検討対象としてきた「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(医学系指針),「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(ゲノム指針)等に加えて,従前,理解が表層的であった医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP),臨床研究法,再生医療法等について深く学習し,その相互の影響について具体的に把握することができた。 また,米国の規制ルールに関しては,医療機器についての合衆国食品医薬品局(FDA)の規制,および医薬品についてのFDA規制について歴史的経緯を詳細に把握することができた。 さらに,2018年夏に開始されたゲノム指針と医学系指針を統合する作業が進められ,2019年12月には「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の素案が,2020年6月にはパブコメ用の草案が,同年12月には親部会案が示され, 2021年に案が取れた同指針が告示されたことに並行して,パブコメ意見を提出するとともに,医学研究に適用されるわが国の法令・指針について幅広に批判的検討を行うことができた。 ヨーロッパの状況については不十分ながら医薬品および医療機器に関するEUの規制を跡づけることができた。 他方,倫理委員会による審査やインフォームド・コンセントの要件を中核とする医学研究に対する倫理的規制については,海外の有力な研究者から批判的な意見が出されていることを把握した。その本格的な理解には至っていないが,わが国のあり方を考えるためにも検討することが重要と思われるので,本年度の課題の一つとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.米国の医学研究ガバナンスにおいて中心的位置を占めるコモン・ルールについて, 2018年改訂の内容を具体的に把握し,文字化することができた。また,これまで一般的知識しか得ていなかったFDA規則について,歴史的な経緯と現行規則の双方について詳しく把握し文字化することができた。 2.従前に引き続き,医学系指針,GCP,臨床研究法,再生医療法について解説する講師を務め,フロアから頂戴した質問に答えるとともに,意見交換を通して自身も学ぶことができた。前年度原稿を提出していた日本整形外科学会総会報告を敷衍した論説,およびそれを踏まえた商業誌掲載の解説が刊行された。 3.医学系学会・研究会に積極的に参加し,それを通して,倫理審査委員会をはじめ医学研究の実情や医学研究に関する法令・指針が研究現場に及ぼしている影響について情報を収集できた。 4.「人を対象とする生命科学・医学系研究」について資料を収集し,またパブコメ案について意見を述べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって,海外の状況を参照しながら,わが国の医学研究に対する規制ルールの動向について,かなりの程度,把握,分析,検討することができた。今後は,2021年3月に告示された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の内容も含めて,わが国の動きが,海外の動きと共通するところ,相違するところに関して,その由来や影響なども含めて検討したうえ,その適否を評価するための考察を進めたいと思う。その際には,倫理委員会による審査やインフォームド・コンセントの要件を中核とする医学研究に対する倫理的規制に批判的な見解も踏まえて検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度において参加予定であった医学系学会・研究会が新型コロナウイルス蔓延によって中止・延期になったため,その参加のために予定していた旅費等について未支出のものが残り,次年度使用額が生じた。 2021年度において研究とりまとめのために必要なソフトウェア,図書等の購入を予定しており,次年度使用額はその費用に宛てることを計画している。
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