本研究は、国際環境法上の予防アプローチ(precautionary approach)の発展が、海洋の科学調査活動に対する規律にいかなる影響を与えつつあるのか、主に商業目的の活動に対する規律との関係に着目しながら、解明することを目的とする。2022年度は、新型コロナ感染症流行の影響をふまえて研究期間を再度延長し、前年度からの作業の継続と調査の更新などを中心に、成果のとりまとめに向けた研究を継続した(本研究期間の最終年度)。 研究期間全体では、海洋関連の条約体制のもとにおける海洋地球工学活動の規制や、生物・非生物資源の研究、探査等に関わる規制を中心に、科学調査活動に対する具体的な規律の発展について詳しい解明・検討を行うことができた。特に予防アプローチの採用に伴い、科学調査概念自体の明確化が重要な課題となっていること、また従来より見られた基礎研究/応用研究といった概念類型の再検討が必要とされていることが確認されるとともに、商業目的の活動の規制との連関や、各国の研究計画やその成果に対する手続的な規律が進んでいること等が明らかにされた。そして、個別の条約体制に関わる以上の成果をふまえて、国連海洋法条約の関連規定(主に同条約第12部・第13部の関連規定)の解釈について、さらに検討を進めることができた。研究代表者の体調不良もあって年度中に研究成果を公表することはできなかったが、近いうちの論文等の公表に向けて引き続き作業を継続している。
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