研究課題/領域番号 |
18K01392
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
森 勇 中央大学, その他部局等, 客員研究員 (30166350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 弁護士の懲戒 / 弁護士の一般的義務 / 弁護士の品位 / 連邦弁護士法 / 連邦憲法裁判所 / 連邦通常裁判所 / 弁護士賠償責任 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、ドイツサイドの研究協力者(機関)の支援のもと収集した、主にはドイツ連邦憲法裁判所の弁護士職業法関連裁判例の整理・翻訳を日本サイドの研究協力者の支援をも得つつ進めつつ、目途とする連邦憲法裁判所の判例を中心としたドイツの最上級裁判所の「判例研究」の構想を少しく深化させた。2019年5月にライプツィヒで開催されたドイツの弁護士大会(Anwaltstag)に招待をされ参加した。そのテーマは「法治国家に生きる」であり、法治国家の動態、つまりは「息をする法治国家」に向けられた弁護士の視角あるいはその把握に接することができたのは、今後の研究発展にとり有益であった。 前年度に取り組みを開始した弁護士社団について、立法準備を追う作業を、ドイツサイドの研究協力機関ないしは協力者の支援のもと進めた。ただ、その立法までしばらく時間がかかるとのことであることから、弁護士社団の展開に大きく寄与した最上級裁判所の諸裁判の「判例研究」の発表は立法を待つこととした。 本年度はまた、ドイツにおける懲戒の展開である。わが国弁護士法の「品位」概念との対比において、ドイツの「弁護士の一般的義務」が、弁護士の義務が具体化された現在、果たして懲戒規範となりうるかを検討した。一つには弁護士の基本的義務を定める規定が、品位と同様に抽象的であり、果たして憲法が要請する明確性(Bestimmtheit)に適うかという問題があるからである。 これに加え、弁護士賠償責任事件の最上級審であるドイツ連邦通常裁判所第9法廷の裁判官であり、マンハイム大学教授のMarkus Gehrlein博士を招聘し、最上級審裁判官として事件を通じて得た現在の弁護士像をテーマに意見交換の機会を得るとともに、日本弁護士連合会との共催による日本比較法研究所主催セミナー「弁護士の職業責任の基本構造」を2019年10月に開催し、好評を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象となる(収集した)ドイツ弁護士職業法関連のドイツ最上級裁判所の裁判例が、助成申請時当初の予想をはるかに上回っていることから、事業年度内にすべてを完結することはすでに現時点でかなりの困難を伴うことが予想されることから、やや遅れているとの位置づけをした。個別事項に関する研究活動自体は、ほぼ順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どうり、ドイツ憲法上の弁護士の位置づけとその機能という観点から、連邦憲法裁判所の裁判例を中心に、弁護士職業法関連「ドイツ最上級裁判所判例」を、個別テーマごと類型化して、その分析・検討を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前々年度(平成30年度)において、別の財源を利用できたことによる支出抑制額があり、前年度は、それを踏まえた支出予定を立てたが、(招聘した外国人協力者を含む)研究協力者のご厚意により、当初予定していた支出を節減できたこと、そして予定していた第3四半期における支出を伴う活動を諸制約により、見送らざるを得なかったことから、当初予算との乖離が生まれた。 次年度使用額については、活動をより活発化させる必要があることから、本来であれば実現できた調査(インタビュー)のための渡独の費用、招聘費用にあてることを予定している。ただし、現下の状況に照らすなら、渡独・招聘計画の立案そのものがかなり不確実である。。
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