研究課題
本研究は、犯罪捜査機関が行うコンピュータ・データの取得について、法制度上の課題を検討するものである。被疑者に関連するコンピュータ・データは、現在では主要な捜査対象の一つである。例えば、電子メールに関する記録、被疑者の通信やオンライン・サービスの利用記録、被疑者が自身のコンピュータやクラウド上に保存している電子ファイル等が捜査対象になる。さらに、携帯電話端末や自動車の位置情報、CCTV(監視カメラ等)やドライブレコーダの記録、IoT(Internet of Things)技術によっても、大量の情報が蓄積保存されている。これらの情報を取得することは、被疑者のプライバシーや個人情報保護の観点から問題となる場合があり得る。また、ネットワーク上の情報の多くは、国外に保存されているため、国際法上の問題を生じる場合も多い。このような捜査における法的な問題について、我が国と欧米の制度や運用を比較分析し、制度のあり方に指針を示すことが本研究の目的である。2018年度から2019年度には、越境データ捜査に関する国際法および情報法上の課題を調査と分析を行った。2019年度以降は、特に被疑者に関する情報を保有しているIT企業などの第三者に対する捜査に焦点を当て て、 制度と実際の運用の動向について検討した。特に、2019年度には、米国西海岸の主要IT 企業、ネットメディア企業、ITベンチャー 等を訪問して実態調査を行っている。2022年度は、前年度までに行った調査と論点整理を踏まえ、学会での報告や議論を重ね、各国と我が国の制度整備や法適用の状況との比較・分析を行い、成果をまとめている。2022年9月には、これまでの研究成果を英語論文としてまとめたものが、国際会議(情報処理国際連合HCC15 - 15th International Human Choice and Computers Conference)に査読付き論文として採択され報告を行っており、この国際会議の成果として出版された書籍にも掲載された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Human Choice and Digital by Default: Autonomy vs Digital Determination, IFIP Advances in Information and Communication Technology
巻: 15 ページ: 200-213
10.1007/978-3-031-15688-5