本研究が目的とした胎児の私法上の権利主体性の肯定可能性及びその法的構成の検討は、出生により人の私法上の権利主体性を肯定する民法3条1項の解釈に疑問を提起した。医療技術の進歩は疾患をもつ胎児に母胎内又は母体外で出生前治療を受ける機会を生じさせたが、本条項の従来の解釈に従えば、胎児の私法上の権利主体性は、母胎内で治療を受けた胎児は否定されるが、母体外で治療を受けた後母胎内に戻された胎児には肯定される余地をもたらした。本研究の学術的・社会的意義は、いずれの治療方針をとっても胎児の権利主体性に差異を設けるべきではないから、大半昭和7年10月6日判決の立場には問題が含まれることを明らかにしたことにある。
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