研究課題/領域番号 |
18K01403
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
宮畑 加奈子 広島経済大学, 経済学部, 教授 (20441503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 台湾 / 都市法制 / 文化(旧慣) / 地方自治 / 都市計画 / 亭仔脚 / 不見天街 / 文化資産 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本統治初期の市区改正から後期の都市計画に至る過程を振り返りながら、主として以下の諸点につき考察し、論文にまとめた。 歴史的な建築物、建造物を中核とした都市への変容が進行する台湾では、都市計画と文化資産の保存・活用をいかに融合させるかが喫緊の課題の一つであり、現行の文化資産保存法の下で、文化資産の「保存」と「再利用」、ひいては都市の「再開発」までも総合的に推進しつつあるが、台湾のこの方向性は、台湾という「場所の固有の価値」を創造する試みであり、台湾の固有性とは、「近代化」の過程が色濃く刻印された日本統治期の建築物と不即不離の関係にあること、②またそれは単なる「西洋化」ではなく、台湾の公共意識を反映した慣習的な建築様式「亭仔脚」の設置義務化に象徴されるように、独自の色合いを帯びたものである点、③「公共性」を根拠とした所有権への制約を伴う都市計画法制は、当時施行されていた多くの法律に抵触し、当初は実施が困難であったが、その後の地方自治の進展が媒介となり、台湾都市計画令の制定が可能となった点等につき検証した。 また対外的には、サントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成」の講師として「台湾文化資産保存法の史的経緯と課題」というテーマで報告し(9月)、さらに、広島経済大学シティ・カレッジ(公開講座)の「台湾不動産法制と日本への示唆」において台湾のまちづくりについて言及し(11月)、広島アジア塾では「台湾における文化資産を中心としたまちづくりについて」というテーマで報告を行う(2019年3月)など、これまでの台湾文化資産に関連する研究成果を発表し、広く意見交換を行う中で有益な示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究成果は年度末の論文に集約されている。また文化人類学や市民団体の方々との意見交換により具体的な課題がより明確となったことで、今後の可能性をより広げることができた。また今年度は2度の学会報告が予定されていることから、学際的な知見を得ることでさらなる研究の進展が期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本政治法律学会およびアジア法学会において本課題に関連する研究報告が予定されており、報告時の質疑応答時に得られた示唆を反映させながら、考察を深めていく所存である。 また本課題の重要な要素である「地域振興」につながる歴史的建造物の具体的な活用事例の考察も今年度の大きなテーマとしたい。例えば、台湾の国家的学術研究機関である中央研究院による、歴史的な資料(歴史、地図、イラスト等)を総動員したガイドブック『台湾歴史地図散歩』(台北版については、日本語版もホビージャパンから2019年3月にすでに発売されている。)の出版が現地でも話題となっているが、原爆投下で歴史的建造物の現存しない広島においても大いに参考価値があるものと思われ、台湾中央研究院、広島県、広島市の連携等も視野に入れた企画を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度の使用額は予算額とほぼ同額であるが、物品費分に若干の余剰が生じたため。 (使用計画) 令和1年度の予算と合算の上、旅費または物品費として使用する予定である。
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