研究課題/領域番号 |
18K01406
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 洋平 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90242065)
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研究分担者 |
古賀 光生 中央大学, 法学部, 准教授 (50645752)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 政党政治 / フィードバック / 西ヨーロッパ / 日本 / 近接比較 / 政治史 / 比較政治 |
研究実績の概要 |
失業保険のヘント・システムやビスマルクの労働者保険が、労組の強化を通じてその背後の社会主義政党の組織的発展を支えたことに代表されるように、社会保障制度がひとたび作動し始めると、職能団体や政党などの組織や行動を左右し、政治構造を変えるに至った例は少なくない。こうした社会保障制度の「フィードバック」効果に関する知見は、これまではアドホックな歴史解釈に留まってきたが、本研究は日欧の政党政治の比較分析を通じて、これを検証し体系化しようとする。この作業を通じて、福祉国家の拡充や縮減が主要政党にいかなるインパクトを与えたかを明らかにし、20世紀の西欧諸国や日本の政党政治の歴史的展開に新たな比較分析の地平を切り開く。 具体的には、比較政治史の手法を採り、主にフランスと日本、ドイツとオーストリアの二組4カ国の対比較を通じて、社会保障の各分野の特定の制度構造がいかなるインパクトを政党組織や有権者との結合関係に齎したかについて、仮説的な図式を定立する。 令和3年度には、引き続き、主要な事例である仏日独墺に関する実証分析を進め、その完成を目指した。しかし、後述するように、新型コロナの感染が十分に収束せず、フランスなど現地における史料収集が再開できなかったため、今年度も作業を完結させることはできなかった。 ただ、その代わり、4つに分けた時期のうち、歴史部分に当たる第1~3期については、追加の二次文献の収集・解析や手元の史資料の再検討を通じて、これまでに得た知見の整理・統合を進めることができた。これによって、次年度に延期した現地史料収集において解明すべき焦点が更に鮮明となり、研究の完成に向けた準備が整ったと言える。 また、第4期(現代)については、古賀が、オーストリアにおいて福祉国家改革の原動力となっている急進右翼政党・自由党について、政策路線や支持基盤の新たな傾向に関する分析を進め、成果の一端を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度は新型コロナの感染収束を待って、遅れていたフランスなどにおける史料収集を再開し、研究を完了させることを予定していたが、年度を通じて感染が十分に収束せず、ヨーロッパ諸国に安全に滞在し作業できる状況にはならなかったため、結局、当年度も、一切の渡航計画を見合わせざるを得なかった。 とはいえ、上記のように、当年度中に、これまでの知見や論点の整理などの作業を進めたことによって、次年度中には、新型コロナの収束を待って、現地での一次史料の収集とその解析を終え、研究作業を完結させることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現地史料の収集・解析を作業の柱とする本研究課題は、新型コロナの長引く流行によって長らくその進展を大きく阻害されてきたが、本報告書執筆時点の動向を見る限り、国境を越える移動に伴う規制も緩和・解除の方向に向かいつつあり、状況の激変がない限り、次年度中には、予定したフランスなどへの渡航を大きなリスクを冒さずに実施できるようになると期待している。可能と判断され次第、勤務先の授業などの業務が許す限り、なるべく早いタイミングで一連の史料収集を実施し、その後、できる限り早く研究を完成できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度にまとめて行う予定だったフランスなどにおける史料収集のための出張が、新型コロナの流行継続により、国境を越える短期渡航に伴うリスクが十分下がらなかった結果、当年度中も一切実施できずに終わったため。 これを受けて、当課題は事業期間の再延長を認められた。次年度以降、流行がこのまま収束に向かえば、集中的かつ機動的に現地史料収集を行うことで、当初計画に則って残額を使用できる見込みである。
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