本研究の目的は、「政党は、異なる政策的立場をもつ所属議員に対して、どのように一体的な行動を課しているのか」を明らかにすることである。5年の研究期間において、政党は、役職、選挙期間中の総理大臣の選挙区訪問などの資源を戦略的に配分することで、所属議員に党議に沿った投票行動をさせていることを明らかにした。
第一に、資源は、政策分野によって配分方法が異なることを示した。外交・防衛分野では党の立場に近い議員に、報酬として資源を配分する。一方、経済分野では党の立場に遠い議員に、補償として資源を廃部する。第二に、資源として、首相訪問は確かに議員の得票を向上させるが、役職にはそうした効果は確認できなかった。後者の点については、「議員は、選挙区に利益誘導するために、選挙区の利益に関連が深い委員会に所属する」、「政党は、役職を配分することで、議員からの忠誠を得る」と主張する従来の研究の前提が実証的に支持されないことを明らかにしており、本研究内での十分にそのメカニズムを明らかにできていないものの、今後の研究への重要な示唆を与えている。5年の研究期間中に、Election Law Journal、Representation、Legislative Studies Quarterlyという3報の英文査読誌に掲載されたことは、本研究の成果を広く国際的に示すことができたと考えられる。
最終年度の2022年度は、特に委員会の委員長に焦点を当て、同一政党内であっても、党の政策から遠い議員を委員長に任命すると、その委員会で閣法の修正が増えること(委員長の党からの逸脱行為)、それゆえ与党は法案の円滑な可決のために、党の立場に近い議員を委員長に任命することを解明し、上記の通りLegislative Studies Quarterlyに知見を発表できた。
|