研究期間を通じて得られた最大の成果は、英語圏における20世紀後半以降の政治思想史方法論の展開に、学説史的な位置づけを与えられた点である。具体的には、政治思想史研究におけるケンブリッジ学派の方法論は、実証主義や因果的説明をめぐる20世紀半ばの社会科学方法論論争(実証主義とヴィトゲンシュタイン派のあいだの方法論争)という知的文脈を無視しては理解できないこと、等が判明した。ケンブリッジ学派の方法論を「実証主義」や「コンテクスト主義」と位置づける理解は、テキストもコンテクストもふまえない誤読と判定できる。
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