研究実績の概要 |
本研究は,混合型選挙制度(Mixed-member Systems, MMS)に着目し,政治制度の設計者が当初企図した帰結と,実際の政治現象との間に,何故乖離が生まれるのかを解き明かすものである.より具体的に本研究は,以下の問題の解明を試みる. (1)小選挙区制ではデュヴェルジェの法則により候補者数が2となると理論的に予測されるのに対し,MMSを導入した国(日本,韓国,ニュージーランド等)において2に収斂しているわけではなく,選挙区ごと・選挙年度ごとのばらつきも激しい.これは何故か. (2)小選挙区選出議員ほど地元志向で,比例代表選出議員ほど政党志向であると理論的に予測されるのに対し,必ずしもこのような役割分担があらゆるMMSでなされているわけではなく,例えばニュージーランドでは比例代表選出議員も選挙区選出議員とは遜色ないほどの割合で,地域利害の代弁者となっている.これは何故か. (1)については,MMSを導入したスコットランド,ウェールズ,ニュージーランドの選挙区レベルのデータを収集した.これを元に,MMS特有の制度である,小選挙区の敗者が比例代表で当選が可能という所謂比例代表での敗者復活制に着目し,比例代表選出議員が多い選挙区ほど次回の選挙での候補者数が2よりぶれやすくなるのではないかとの検証を行った.(2)については,ニュージーランドにおける議会での議員の発言を,1987-2016年の期間にわたる網羅的なデータを構築した.これを用い,感情分析の手法を用いて,発言の質がどのように変化したか検証した.
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