コロナのため、海外渡航及び招聘は実施できなかったが、研究課題に関連する拙論「英国1911年議会法6条の重要性:金銭法案ではない「歳入法案」に関わる習律の問題」を『立命館法学』2021年5・6合併号において発表した。同論文においては、金銭法案に関して下院のみの可決で1か月後には上院の態度に関わらず法案として議会を通過させられるという1条の規定が、1909年の上院の歳入法案否決以後は一度も使われてこなかったこと、また、英国政治学憲法学者の圧倒的多数はそのことを理解して様々な文献に既に書いてきたのに対して、日本における研究ではいまだに1条が効果的であるという理解しかされてこなかった点を指摘した。 日本における現状の説明は、6条にある「この法律のどの事項も、庶民院の持つ現存する権利と特権を減らしたり、制限したりはしない」Nothing in this Act shall diminish or qualify the existing rights and privileges of the House of Commonsという言葉の意味は、日本の政治学でも憲法学でも理解されてこなかった。本論文は、日本ではあまり理解されていない議会法6条の意義について論じたものである。したがって、本論文は、その日本的理解が未だに100年ほど前の理解にとどまっているということを指摘した点で、意義があると考える。
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