研究課題/領域番号 |
18K01428
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
善教 将大 関西学院大学, 法学部, 准教授 (50625085)
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研究分担者 |
秦 正樹 北九州市立大学, 法学部, 講師 (10792567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 若年層 / 選挙権年齢 / 投票率 / 政治参加 / 意識調査 / サーベイ実験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、選挙権年齢の引き下げが若年層の政治意識や行動に与えた中・長期的な影響を明らかにすることである。具体的には、2019年7月に行われる予定の参院選後に若年層を対象とする意識調査ないしサーベイ実験を実施し、制度改革の影響を検証する。そのためには、2018年度に、若年層の政治意識や行動に関する研究をサーベイし、2019年度に実施予定の意識調査に向けて、しっかりとした土台を構築する必要がある。当初の計画においては、2018年度中にプリテストを実施する予定であったが、調査費用が当初の予定から削減されたため、2018年度は研究代表者・研究分担者ともに、2019年度の調査に向けて準備を行うこととした。
2018年度に行った研究の結果、主に次の知見を得た。第1に、若年層を対象とする最新の研究をサーベイした結果、政治的社会化(political socialization)への関心は世界的に高まっている一方、日本を例に若年層の政治意識や行動を実証的に分析する研究は少なく、残された課題となっていることが明らかとなった。第2に、実験研究に基づく若年層の政治意識研究は世界的にもまだ少なく、多くは観察調査に基づく研究であることも明らかとなった。自然実験やサーベイ実験を用いた研究の蓄積も残された課題だと言える。第3に、若年層を対象とするサーベイ実験の結果、若年層の意思決定過程は、若年層以外のそれと異なる可能性があることが明らかとなった。特に顔の表情などを意思決定の際の手がかりとするかという点について、若年層とそれ以外の層では大きく異なる。この知見の頑健性や妥当性も含め、さらなる実験研究を蓄積させていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、2019年度に実施予定の若年層を対象とする意識調査およびサーベイ実験を作成するための準備作業に、研究代表者、研究分担者それぞれが着手した。具体的なサーベイ実験案などはまだ確定していないものの、以下に記す通り、そのための準備は着実に進められてきており、概ね順調に進展していると評価できる。
研究代表者は、国内外の学会(日本選挙学会やAmerican Political Science Association)に参加し、先端の若年層研究においてどのような研究が行われているのかを把握するように努めた。その結果、近年、政治的社会化に関する関心が世界的に高まっており、そのためのサーベイが世界的に実施されていることが明らかとなった。他方、自然実験やサーベイ実験などを用いる研究は少なく、多くは観察調査を用いたものであり、この点に課題があることも同時に判明した。
研究分担者は、若年層の意思決定過程に関する実験論文を執筆し、その成果が学会誌(『公共選択』)に掲載された。この研究は、若年層は他の世代と比較して顔の表情など視覚情報に頼る傾向が強いこと、言い換えれば、世代によって何がヒューリスティクスとなるかが異なることを実験により明らかにしたものである。実験設計について多くの課題を残すものであるが、本研究の土台となる研究であり、これを下地に本研究の実験案についても設計していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に得られた研究成果を踏まえ、2019年度は本研究プロジェクトの要である、若年層を対象とする意識調査およびサーベイ実験を実施する。具体的には2019年7月に投開票が行われる参議院議員選挙後に、若年層(18-22歳を予定)を対象とする意識調査を実施し、選挙権年齢の引き下げが短期および中・長期に亘り、政治意識や政治行動にどのような影響を与えるのかを実証的に分析し、明らかにする。なお、選挙権年齢の引き下げの効果にとどまらず、広く若年層の意思決定過程に関する分析も行える調査とするように設計する。
意識調査の実施に向けて、1月に1回程度、研究代表者と研究分担者で意識調査案について検討する機会を設ける。ただし研究代表者が2019年8月までカリフォルニア在住のため、調査案についての検討は、オンライン上で行うものとする。2019年4月末までに、協議のうえ、調査項目(およそ40問)とサーベイ実験の大枠を確定する。同年6月末までに、Qualtricsを使用する形での質問票を作成する。また可能であれば5月末までに、数名を対象とするプリテストを実施し、質問票の問題点などを明らかにする。これらの作業を終わらせた後に、倫理審査を申請する。そして、参院選後に意識調査を実施する。
意識調査実施後、調査結果について学内外の研究会で報告し、修正のためのコメントを得る。さらに2020年度、日本選挙学会や日本政治学会などで報告するための準備を進める。加えて、選挙権年齢の引き下げの効果については、日本国内のみならず国外の関心も高いことから、英語で執筆し、国外の査読誌に投稿する準備も進める。
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