研究課題/領域番号 |
18K01429
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国家緊急権 / ドイツ政治思想史 / ワイマール共和国 / ワイマール憲法48条 / フーゴー・プロイス / カール・シュミット |
研究実績の概要 |
本年度はまず第一に、前年度に引き続き、ワイマール共和国における非常権限の実像を明らかにするために、それが導入された経緯を、国会議事録に基づき分析を進めた。 具体的には、1919年7月5日の国民議会憲法草案第二読会における憲法草案Vの49条をめぐる審議過程を跡付けた。以上の研究成果は、「ヴァイマル憲法48条をめぐるドイツ国民議会における審議過程(4)」として取り纏め、『松山大学論集』上に公刊した。 第二に、ヴァイマル憲法48条の非常権限の問題を、ヴァイマル末期から逆照射するのではなく、フーゴー・プロイスや制憲議会議員の目線から、同時代知識人との横の関係をも視野に入れて、内在的かつ立体的に解明することを目指す本研究の取り組みの一環として、プロイスとカール・シュミットの48条論を比較して分析した。国家論において対照的な立場にある両者ではあるが、48条2項第一文と第二文の関係についての解釈や、48条5項に予定されていたライヒ法律の取り扱いなどにおいて結果的に平仄の合う部分を見せるなど、これまであまり知られていない両者の新たな側面を明らかにした。本研究は、非常事態とデモクラシーという、現下の時代状況とも密接に関連する、より広いコンテクストにおける有益な視座の構築にも寄与するものである。 以上の研究成果は、2020年秋の日本政治学会分科会「ドイツ政治思想の展開」や2021年春の戦時法研究会において研究報告として発表した上、日本政治学会の学会誌への投稿論文として取り纏めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本政治学会において、ワイマール憲法48条をめぐるプロイスとシュミットの解釈について、従来あまり知らせていなかった両者の影響関係について研究報告を行ったうえで、その内容を論文として取り纏め、日本政治学会の学会誌に投稿した。 他方、ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における調査を計画していたが、コロナの影響で実施できず、持ち越さざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
諸邦委員会における議事内容を確認するため、ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における調査を実施したいと考えているが、コロナの影響を見定める必要がある。どうしても難しい場合は、調査を延期し、二次文献でカバーするなど、対応を考えた上で、研究成果の取り纏めに向けて引き続き努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における資料調査を予定していたが、コロナ禍で国外出張が不可能となり、次年度に持ち越さざるを得なくなったため。
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