研究課題/領域番号 |
18K01431
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
遠山 隆淑 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系人文グループ, 准教授 (60363305)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内閣 / イギリス国制 / バジョット / オースティン / 政治的決定 / 国制史 |
研究実績の概要 |
2019年度は、イギリス国制(English Constitution)における内閣の位置づけについて、J・オースティン『国制擁護論』(1859年)、J・S・ミル『代議制統治論』(1861年)、A・V・ダイシー『憲法序説』(1885年)、F・W・メイトランド『イングランド憲法史』(1887-8年)など、とりわけ国制に関するヴィクトリア時代の政治理論家や国制(憲法)研究者の議論を中心に検討した。また、E・メイ『イギリス国制史――ジョージ三世王位継承以後、1760-1860年』(1860年)など、イギリス国制をめぐる歴史的研究についても分析を進めた。加えて、W・バジョット『イギリス国制論』(1865-7, 72年)「第1章 内閣」を中心として同書の逐語訳も行った。 イギリス国制における内閣の位置づけについては、国制史(constitutional history)からの説明が行われている。たとえば、メイトランドも、内閣について「内閣統治(議院内閣制)の法的可能性」については、「真の統治道具」としての「官印」に求めながらも、この制度の根拠に関しては、「国制上の慣行」から説明するなど歴史的な観点から論じている。しかし、政党の組織化と議会との関係、また国王大権における位置づけの中で、内閣による「結果としての」政治的統合の機能の重要性については共通理解がすでに存在していたことを見いだすことはできるものの、内閣あるいは大臣たちの政治的決定をめぐる協力関係がどのように形成されると理解されていたかについては結論を見いだすには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在のところ、イギリス国制における内閣の位置づけを理論的に考究した議論を中心に検討してきた。しかし、最終的な政治的決定権限の所在に関する議論については、法的な所在の指摘(メイトランドによる「官印」)など、興味深い議論をいくつも目にすることはできたものの、どのような政治的決定が行われたのか、また行われるべきか、というという具体的な議論の分析を行うことはできなかった。このような議論の分析を行うためには、政治史的な議論にまで対象を広げつつ、双方を往還的に検討する必要があるのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べたように、今年度は、年次計画を段階的に進めていくのではなく、イギリス国制理論の分析とウィッグの知識人や政治家たちによる具体的な政治問題をめぐる政治的決定の評価とを同時並行的に分析していく必要があると考えている。そのためには、ヴィクトリア時代の政治史に関する現代の研究にも目配りをしなければならないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、イギリス国制に関する理論的研究のテキストの分析に注力することが多くなりすぎたため、当初予定していたヴィクトリア時代のイギリス政治史関連の資料や書籍を調査し購入するということまで研究を進めることができなかった。今年度は、イギリス政治史関連の研究分野にも同時的に目配りを行いながら研究を進めていく予定である。
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